さがみはら中央区版 掲載号:2019年1月1日号 エリアトップへ

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新春特別対談 地域における身近な介護

掲載号:2019年1月1日号

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福祉は生活の延長線上 社会福祉法人相模福祉村理事長 赤間 源太郎

人としての私でいられる 女優・介護士 北原 佐和子


 少子高齢化が進む日本。国では高齢者人口が2042年まで増え続けると推計しており、これまで以上に介護は私たちにとって身近なものとなっていきます。今回、女優業と介護士の二足のわらじで活躍する北原佐和子さんと、市内最大級の社会福祉グループ・(社福)相模福祉村の赤間源太郎理事長の対談から、地域の中で私たちができることについて探ります。(敬称略)

-北原さんは現在、女優として活躍を続けつつ介護士としても活動されています。

北原 私は18歳でデビューして以来、ずっとアイドル歌手、女優の仕事をしてきましたが、不安定な状況が嫌でした。すごく忙しいかと思えば仕事が止まる。どうすればと悩んでいた中で、心に響く、情熱を注げるものが必ずあると思っていました。そして30代半ばぐらいから深く考え始めた時に、それまで福祉につながる出来事に多く出合っていたことを思い出したんです。子どもの頃、視覚障がいの方やご高齢の方の存在が妙に気になっていたりして。それで福祉に携わってみたいと思い、41歳の頃にホームヘルパー2級の資格を取りました。5年前に介護福祉士、3年前に念願のケアマネジャーの資格を取り、より専門的な知識を持ちたく今は看護学校にも通っています。介護の世界に入ってからは、「自分を作る必要がない」と気付きました。そこに女優・北原佐和子は存在しなくていい、人間としての私でいればいい。今まで感じたことの無い気持ちで、それが長く続けていられる理由だと思います。

赤間 北原さんのように、本来の生活のあるべき姿はこうだよ、と接して頂くことがお年寄りの方にとっても居心地が良いと思います。僕たちも改めてそういう発想をもってやらなければいけないと思う。あとは認知症や障がいのある方々は個々の世界観をもっていらっしゃるから、良い意味で演技ができる、その方に入りやすいシーンを作ってくださってるんでしょうね。

北原 私だけでなく、介護に携わる人はみんなある意味で役者なんだと思います。

赤間 うん、そうあるべきですよね。

北原 みんな知らないうちにやっている、気付かないうちに。娘のように話しかけて頂くこともあるじゃないですか。私は最初はそれが嘘をついているみたいで辛かったんです。本来ならばこの方の娘でもないのに…。その時に施設長に相談したら、「嘘をついてると思うんじゃなく、その人の世界に入ってみたら」とおっしゃって頂いて、それがすごく自分の中で納得できた。私のリアルを押し付けるのではなく、その方のリアルに入らせてもらえばいいんだと。これは役者とか関係ない、みなさんやっていますよね。ただそこに、こんなことができていると自分が気付けるかどうか、そう思えると楽なんじゃないかと思います。

赤間 おっしゃる通りで、僕も利用者の方と接するときはその方の世界観に入らせて頂く。認知症で大切な記憶を忘れてしまったりとか、子どもの時代に戻っていたりとか、どういう思いでいらっしゃるかは本人じゃないと分からない。そういう時にそばにいて差し上げるのはご本人たちにとってはすごく安心して頂けますよね。今日お話を聞かせて頂く中で北原さんにとても共感できる部分が多いです。

北原 明日は我が身ですからね。自分事として捉えることがとても大切で必要なんだと思います。

赤間 僕としては、そういう風に思える仲間、職員たちを作ってこれたと思っています。自分は15年くらい老人ホームに携わってきて、その間、職員の仲間達には「自分の親父、おふくろが住みたい施設を作ろう」と言ってきた。なので北原さんがおっしゃることも本当にそう思うし、福祉に携わる人たちの価値観てやっぱり同じなんだなと。

-赤間理事長から職員のお話が上がりました。介護業界は人手不足が叫ばれて久しいですが、現場のお二方はどのようにお感じでしょうか。

赤間 全体的に少子化だったり、福祉の業界に限らず人手は少なくなっているのが現実。技能実習生の問題なども課題ですし。我々もほかの業界に負けていてはいけない中で、福祉の魅力をもっと伝えていかなければいけない。やっぱり介護に携わっていない方の福祉に対する垣根は今でも高いと感じています。僕は昨年、相模福祉村での利用者とのエピソードを紹介した本を出しました。また、小学生の子たちが見学や交流会、認知症サポーターとして定期的にウチの施設に来てくれています。毎年400人ほどが認知症サポーターになってくれるんです。けど、「将来何になりたいの?」と聞くと「福祉」と答える子は本当に少ない。その子たちに福祉の魅力ややりがいを伝えるにはどうしたらいいかなと。そういう意味で北原さんのような方が介護に携わっていることは福祉への憧れや親しみを持って頂けると思いますし、私たちが情報発信をして、もっと福祉とはこうだと伝えていくことが必要だと思います。

北原 若い方々とお話をしていると、高校生の時に施設にボランティアに行ったことが忘れられなくて、という方が結構いる。だから時間がかかっても、コツコツとやって地域の若い方たちと交流していくのは大事ですよね。

赤間 おっしゃるように「昔福祉に関わったことがあって」という方もいらっしゃるので、きっかけを多く作っていくことが必要ですよね。あとはやっぱり、障がい者の方や認知症の方に対しては、様々な情報を流すと捉え方や見方が変わってくる。電車に乗っていて奇声を上げる方がいたときに、「え、なんだ」「怖い」と思ってしまうけど、彼らだって表現の仕方や多様な生き方について伝える人がいないから誤解されてしまう。そういう意味では、一人ひとりの個性だったり、そういう生き方もあるんだと理解して頂きたいですね。

北原 子どもの頃から関わる機会があれば違うと思うんです。今は一緒に教育を受けたりと変わってきていて、その中で補い合って生きていくということがとても大切なんだと思います。私は認知症啓蒙活動もやらせて頂いていて、その時間は私にとってすごく大切で。認知症の方との友人としての関わりで、正直な思いをきちんと聞くことが出来る。例えば、「『何が困ってるの?』と聞かないでよ。『何したい?』って聞いてよ」って。だって普通の会話ってそうですよね。話し始めは何したい?という問いかけじゃないですか。けど認知症っていうだけで、まず「何が困ってるの?」と聞かれてしまう。それが嫌でたまらないとおっしゃっていました。そう言われると気付かせてもらえる、この時間は私にとって現場でどういうスタンスでいるべきかの勉強になる。互いに理解し合って、補い合って地域社会で生きていくということが大切で、そこをこれからの子どもたちには分かってもらいたいと思っています。私たちができないことも当たり前にある、認知症の方たちなどが補えることだってある。そのことがしっかり分かると、良い意味で共生できると思います。

-介護を取り巻く環境はめまぐるしく変化しています。これからの介護のあり方についてのお考えをお聞かせください。

北原 本当に他人事ではなく、若年性認知症になるかもしれないし、疾患によって介護が必要な状態になるかもしれない。そうなった時に、自分自身や相手を受け入れられるような心が必要なんだと思います。

赤間 相模福祉村の理念にも掲げている通り、介護や福祉は生活の延長線上にあると思っていて。肩肘を張らずに、生活の中での一つのシーンとして考えて頂けたら。改めて福祉や介護を考えるのはなかなか難しいかもしれないですけど、福祉は町づくりの一つですから。私たちが活動を発信し続けながら、これからの町や福祉をどうしていくべきかを地域の方と手を取り合いながら考えていけたら嬉しいですね。

北原 私はこのマザーテレサの言葉が好きで。「人生のたとえ99%が不幸だとしても、最後の1%が幸せならばその人の人生は幸せなものになる」。最後の時に、「いま幸せだな」と感じられればもしかしたらそれまでがどうであれ、大きな喜びで閉じることが出来るかもしれない。そして私がその方の1%の喜びを提供できる1人にもしなれていたなら、私も幸せだと思える。これは私の介護業界でのあり方になってしまうかもしれないですが、そんな風に思える方が1人でも増えてくれたらいいなと思いますね。
 

社会福祉法人 相模福祉村

相模原市中央区田名6769-2

TEL:042-761-7788

http://fukushimura.or.jp/

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