区内下九沢在住で現在闘病を続ける伊藤恵理香さん(47)が先月、病室で静かに夢を叶えた。それは、一人娘の千冬(ちふゆ)さん(18)に、自分がかつて成人式で袖を通した晴れ着を着てもらうことだった。
伊藤さんは、子宮にできる悪性腫瘍の一つである子宮平滑筋肉腫を患っており、昨秋から北里大学病院で抗がん剤治療を続けてきた。しかし、これ以上の治療は難しく、先月から緩和ケアに入っている。
伊藤さんは元々着付けも行う美容師で、20歳のときに北海道から上京。身一つでやっていく覚悟として買ったのが、30万円した成人式用の振り袖だ。
余命わずかと知り、真っ先に頭をよぎったのは娘のこと。女手一つで育ててきた娘は、今年から社会人になり介護の現場で奮闘している。「娘の成人式では私が着付けてあげたかったな」。病室でこぼした一言を聞いた看護師の一人が伊藤さんの思いを汲み、特別に病室で着付けが行えるよう、すぐに段取りをつけた。「2年早いけど、晴れ着姿が見られる。そう看護師さんから聞いたときは涙が出ました」
6月10日、少し照れくさそうな千冬さんが病室を訪れた。酸素吸入器を付けながらの着付け。息が上がり、時折汗が頬を伝う。看護師が様子を見守る中、休みを挟みながら約1時間後、艶やかな晴れ着姿が完成した。伊藤さんは「100点の出来。ワガママを聞いてくれた皆さんには感謝しかない」と晴れやかな表情を浮かべた。千冬さんは「以前から着せたい振り袖があると聞いていた。これからの限られた時間を、親子2人で大切にしていきたい」と話した。
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