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生きざま映す「人生紙芝居」 創作・実演家の本多さん

文化

掲載号:2019年7月11日号

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情感たっぷりに『駐在さん』を上演する本多さん
情感たっぷりに『駐在さん』を上演する本多さん

 人生のある出来事にスポットライトをあて、その人の生きざまそのものを浮かび上がらせる。介護現場などでも注目を集めるというこの「人生紙芝居」に取り組むのが、区内在住の紙芝居創作家・実演家の本多ちかこさんだ。

 「戦争をくぐり抜けてきた人の話は、残したいと思ってきた」と本多さん。今年4月、自身の父の足跡をたどる人生紙芝居『駐在さん』を雲母書房から刊行した。戦災を経験した身ではない、という思いがあり一歩が出ずにいた中で、郷里の宮城県の父に「ヤミ米」の話を聞いたことが契機になった。大正12年、農家の次男坊として生まれ、復員して警察官となった父。日本中が貧しかった昭和23年、戦後の混乱の中で食料もろくにない時代に、非正規に流通するヤミ米をあえて見逃していた―。作品となったのはそんな駐在時代のエピソード。「今日は米が食べられる」と喜ぶ幼い子どもの会話からヤミ屋が来ることを察知するが、検問の際にその子らの表情が浮かび、米を見ぬふりをする「駐在さん」の物語だ。帰省の度に父に話を聞き、ともに駐在先だった七ヶ宿町を訪れるなどあちこちを見て回った。町の人に愛され、長く勤めた姿を温かいタッチで描いた作品の完成を前に昨年3月、父は94歳で他界。見せてあげられなかったことを悔やみつつ「今までとは違う方向から家族を見つめる機会になった」表情を和らげる。

一期一会の真剣勝負

 地域の朗読サークルで声を使う表現を学び、読み聞かせの会に参加する中で紙芝居に出合ったのは40代の頃。誰かに見せるために作られ、人に見せて初めて成り立つ、その特性に強く魅かれた。上演は「一期一会のライブ。相手が赤ちゃんでもお年寄りでも真剣勝負」。同じ作品でも語り口でガラリと変わる芸能性に「これは天命だ」と思うほど、取りつかれていった。

 創作も始め2008年に初めて出したコンクールで優秀賞に。美大出身で絵を学んだことはあったが、家庭もある中で改めて人に教わるのは難しく「全て独学」。腕を磨くためまずは10年コンクールに出そうと決め、毎年入賞し続けてきた実力の持ち主だ。「地域で暮らしている以上、立ち位置を忘れないように」と、相模原の伝承をもとにした作品も多数製作。郷土資料の一文や地の人のちょっとした一言を足がかりに取材を徹底し、物語に仕上げることもある。

 人生紙芝居の一番のテーマは「歳を重ねた人に語ってもらいたい」という思い。その時代を生き抜いた人の、生きた証をその場の皆で共有する。「認知症の深い方も、紙芝居をきっかけに語り出すことがある」。コミュニケーションツールとしての新たな可能性を見出した今、実演や創作に奔走する毎日だ。

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