病気や事故で失った四肢の代わりとなる人工の手足、義肢。病気で足を失い義足生活を送る経験から、「義肢への理解が進み、生きる上でさまざまな選択肢があることを知ってほしい」と奮闘する男性がいる。
星が丘在住の近藤大助さん(49)は2年前、持病の1型糖尿病が悪化し右足膝下を切断した。「あるべきものがない」。受け入れられず強い喪失感に苛まれたが、妻や15歳の娘は予想に反して落ち着いていた。娘からは「ずっと痛そうにしてたから切ってよかった」と思いもよらぬ言葉で背中を押され、少しずつ前を向く。
「気付いてほしい」
義足生活を始めると、狭いトイレや急勾配の坂道など、いくつもの不自由さを感じた。どれも健常者だったときは何も思わなかったことだ。足首や結合部でつかえてしまうため、ズボンの膝下部分も切った。あらわになった肌色のカバー部分。「義肢を隠して暮らしている人が多いが、そうすると見た目は普通なのでなかなか周囲の人からわからない。でもそれでは一向に義肢への理解が進まない。自分は義足に気付いてほしいし、義足でもちゃんと生きていけるということを知ってほしいと思った」
近藤さんは義足を少しでもお洒落で気分が「アガる」ものにするため、カバー部分に何か着けたいと考えた。カバーや義足そのものは国家資格がないと作れないが、それをさらに覆う「ウエア」はどうだろう。既製品をインターネットで調べてみると、ヘルメットと同じ素材で作られたものが1つ8万円もした。「強度はいらない。もっと安価で、洋服のように毎日気分で付け替えられるものは作れないか」。手に取ったのは柔らかいレザー素材。見様見真似で型紙を考え、慣れないミシンを走らせた。より足にフィットするよう、ふくらはぎと足首の部分を分けて覆う2枚式にした。ウエアには複数のベルトが付いており、膝裏で調節することができる。素材を変えた分、価格は4分の1ほどに抑えられた。試作を重ね、日によって柄を変えられるリバーシブル仕様のものも作った。
昨年10月、販売用の会社を立ち上げた近藤さん。自身の経験を生かした今後の商品展開の構想もある。「足を失い義足となり、生活や外出が億劫になっている人に届けたい」。近藤さんは新しい夢を抱き、歩み出したばかりだ。
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