2月1日に文芸社から著書・処女作『流転』が出版された 新井 多志郎さん(本名:高橋敏彦) 上溝在住 68歳
自らの半生、筆に込め
○…自らの半生を振り返る自叙伝的な小説『流転』が発刊された。「出来た時にはうれしくてうれしくて」と、著書を何度も読み返したという。出版社に原稿用紙を持ち込んでから約1年。編集者と何度も打ち合わせをして仕上げた一冊に、感慨無量だ。届いたばかりの初刷りは、今まで世話になった人たちにサインをして配った。本の帯に書かれた「暗黒小説」の文字からは、波乱に満ちた過去が想像できる。「たくさんの人に助けてもらって今がある」
○…東京都東村山市出身。幼少期は原っぱを駆け回るような「ガキんちょ」だった。「志村けんと同じ」と誇らしげに語る中学校時代には野球に熱中。都大会で好成績をあげるチームの投手を務めた。高校でも当初、野球を続けていたが、いつしか暴走族に仲間入りし、警察官だった父と頻繁に衝突した。それでも「勉強はできた」。不良と呼ばれながらも、ストレートで東大法学部に合格。卒業後は「公務員になれ」という父に反し、大手銀行に就職した。
○…行員時代には支店長も務め、順調にエリート街道を歩んでいたが、反社会的勢力への融資問題で懲戒解雇に。「銀行のクビが転機だった」と語る様に、以降「何度も自殺を考えた」ほど苦悩の日々が続く。裏社会、ホームレス、自己破産、相模原で介護の職に就くまで―。「表も裏も経験するなんて、なかなかない。本にしたいと思った」。介護夜勤の合間に自らの半生を振り返り、ノートに綴った。
○…愛犬ゴン太を相手に大好きな野球を観ながら、ちびちび酒を飲む時間が「今までで一番平穏な日々かな」と目を細める。現在、2作目を執筆中。始まったばかりの作家人生。「構想がどんどん浮かんできてね」と、筆を走らせる毎日だ。
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