さがみはら中央区版 掲載号:2021年3月11日号 エリアトップへ

「牛」通じ伝える、福島の今 日本画家・戸田みどりさん

社会

掲載号:2021年3月11日号

  • LINE
  • hatena
約1年をかけて描いた新作「エステル―明日へ」と並ぶ戸田さん
約1年をかけて描いた新作「エステル―明日へ」と並ぶ戸田さん

 東日本大震災から10年。地震による被害に加え、原発事故による放射能汚染に今も苦しめられている福島県を毎年訪れ、被ばくした牛の絵を描き続けている人がいる。南区新磯野在住の画家・戸田みどりさん(71)。

「絵を通して被災地の現状を伝え、明日に向けて何をすべきか、共に考えていきたい」。その思いを込めた個展「見捨てられた牛―明日へ」が、4月1日(木)から相模原市民ギャラリー(相模原)で開催される。

 20代の頃から画家として活動する戸田さん。2000年代から「水」をテーマに創作を行い、2008年には横浜で「Living Waters―生ける水」と題した個展を開催。翌年には、ニューヨークでも開催されるなど話題を呼んだ。

 その状況が2011年に一変する。3月11日、東北地方を襲った東日本大震災。そして、福島第一原子力発電所のメルトダウン。連日放送される津波の映像や汚染水の情報に、「命を育むはずの水が人の命を奪う。被害の大きさに、水を描くのが難しくなった」と戸田さんは振り返る。

原発事故の現場へ

 被災地の現状、放射能汚染の影響を自ら確かめたい、その思いから14年に福島県楢葉町を初めて訪問。巡回の警察官以外、誰もいない町で田んぼや街並みをスケッチブックに描きとめた。「原発事故によって何が起きたのか、少しでも残しておきたかった」

 その後、福島県の状況を撮り続けるカメラマン・小林惠さんの写真展で、経済価値のない牛たちを殺処分せず面倒を見続ける『希望の牧場・ふくしま』の存在を知る。どのような場所なのか、興味をかき立てられた戸田さんは15年、画材を手に現地へ足を運んだ。

 被ばくした牛

 「牧場に足を踏み入れてすぐ思ったのは、『もう帰りたい』でした」。福島第一原発から14Kmに位置する牧場には、300頭を超える牛が暮らしていた。しかし、世話をするのはスタッフ2人とボランティア。当然、手が足りず、地面は牛の糞尿まみれ。その敷地を進むと、皮膚病を患い毛が抜けた牛の姿も見受けられた。「牛の澄んだ瞳を見ていたら、辛くて一頭一頭謝らずにいられなかった」。この姿を多くの人に伝えなければ―、その思いで丸2日間、手を止めずスケッチに没頭した。

 帰宅後、体調が優れない日が続いた。それでも絵筆を取り、キャンバスに向き合った。不思議なことに描き始めると、少しずつ気分が回復していったという。「絵を描き、伝えること。それが私に課せられた使命かも」。以降、毎年数日ずつ泊りがけで牧場に通い、牛の姿を追った。

 これまでに完成した作品は、6号から130号まで20点を超える。「過酷な環境でも生きようとする牛の姿に何かを感じてもらえれば。そして、福島の人たちの悲しさや辛さにも思いを馳せてもらいたい」と語る戸田さん。「孫の世代に負の遺産を残さないため、私たち一人ひとりが明日について考えなくては」

 戸田さんの個展「見捨てられた牛―明日へ」は、4月1日(木)から12日(月)の午前10時から午後5時(初日午後1時から、最終日午後3時まで)。7日(水)休館。入場無料。

さがみはら中央区版のローカルニュース最新6

メイプルフリマ開催

メイプルフリマ開催 経済

10月31日(日) 午前10時から

10月21日号

クラシックで秋を優雅に

クラシックで秋を優雅に 文化

27日 ランチタイムコン

10月21日号

市長とまちづくりを語る

市長とまちづくりを語る 社会

10月22日 JCが例会配信

10月21日号

「森の素晴らしさ知って」

「森の素晴らしさ知って」 社会

下草刈りボラ参加者募集

10月21日号

SDGsカルタを寄贈

SDGsカルタを寄贈 社会

 啓発団体が制作

10月21日号

アマゾン探検、延長に

アマゾン探検、延長に 文化

相模川ふれあい科学館

10月21日号

あっとほーむデスク

  • 10月21日0:00更新

  • 10月14日0:00更新

  • 10月7日0:00更新

さがみはら中央区版のあっとほーむデスク一覧へ

最近よく読まれている記事

コラム一覧へ

  •  縄文世界を見に行こう!

    相模原市立博物館レポvol.23文化財×博物館×図書館×旧石器ハテナ館連携事業

     縄文世界を見に行こう!

    「世界遺産じゃないけど相模原にもある縄文遺跡群」博物館考古担当学芸員 河本雅人・長澤有史

    10月21日号

さがみはら中央区版のコラム一覧へ

バックナンバー最新号:2021年10月21日号

もっと見る

閉じる

お問い合わせ

外部リンク

Twitter

Facebook