上溝出身・在住の陣在ほのかさん(22)は、過酷な障害物レースとして知られる「スパルタンレース」で、アジアナンバーワンになることをめざし、地元相模原で日々練習に努めている。けがとコロナで学生陸上を満足な形で終わることができなかった走ることへの思いが、新たな舞台への原動力となっている。
陣在さんは、中学で陸上をはじめ、高校時代は中距離選手として全国でも活躍。日本ジュニア陸上競技選手権大会で6位に入るなど好成績を収めた。しかし、大学時代は練習に熱を入れすぎたことも災いし、疲労骨折などのけがに悩まされた。「高校時代から自分の体の事を考えずに練習をしていた。高校までは周りが気にかけてくれていたから陸上ができていたんだなと実感した」と陣在さんは語る。けがが治り、大学4年の引退試合に気持ちを新たに挑むつもりだったが、新型コロナウイルスの影響で大会がすべて中止。満足に走ることができず、消化不良のまま学生陸上は幕を閉じてしまった。
今年の春に大学を卒業した陣在さんは、「人のためになる仕事がしたかった」とジムトレーナーに就職。しかし、社会人として生活を送る中で、まだ心のどこかに陸上に対する未練が残っていた。「陸上をやっていない将来の自分を想像できなかった」。そんな時に海外に住む知り合いから勧められたのが「スパルタンレース」だった。
「スパルタンレース」は、アメリカ発祥の障害物レース。競技ごとに5Kmから21Km以上の距離を走るのに加えて、ロープを登る、おもりを運ぶ、やりを投げるなどといった、20から30個の障害物を乗り越えながらゴールをめざすという、全身の筋肉を駆使する過酷なスポーツだ。障害物の種類は試合前日になるまでわからず、さまざまな状況への対策を考えることが必須となる。
このレースの存在を知った陣在さんは「やってみよう」と即、大会にエントリー。いきなり上位に入賞したものの、次に出場した沖縄の試合では悪天候に対応できず順位を大きく落としてしまった。それから競技の奥深さにめざめ、高みをめざして練習に励むようになった。
相模原の自然の下鍛錬
過酷なレースを想定した練習を支えているのは相模原の環境だ。休日は津久井湖の周りを走ることが多いという。「相模原は広大な土地で走る場所がたくさん。落ちている木の棒を使って苦手なやり投げの練習もしている」と笑う。
その成果もあり、7月10日に横須賀で行われた5Kmの大会では見事優勝。しかし、ここで満足することなく、陣在さんはさらに先を見据える。次は9月に新潟で行われる全国大会に出場予定。横須賀より長い10Kmと25Kmのレースに参戦する。国内の大会で勝利を積み重ね、めざすは、現在は感染拡大の影響で中止となっているアジアリーグへの挑戦だ。「アジアで1番をめざしていく。その先にある世界にも挑戦していきたい」。精神と肉体を鍛え、陣在さんはアジア一、そしてその先にある世界の頂をめざして挑戦を続けていく。