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ベトナム人技能実習生 夢の晴れ着で誓いの門出 「日本と故郷 つなぐ大人に」

文化

公開:2022年1月20日

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黒褐色とオレンジ色を基調とした振袖に身を包み笑顔のズエンさん=10日
黒褐色とオレンジ色を基調とした振袖に身を包み笑顔のズエンさん=10日

上溝在住 ズエンさん

 今年も多くの新成人たちで彩られる中、こみ上げる思いを胸に式に臨んだ一人の外国人女性がいた。昨年から技能実習生として区内の通所介護施設に勤めるベトナム国籍のチャン ティ ズエンさん(20)=上溝在住=がその人だ。案内状で成人式を知り、「振袖を着てみたい」と夢見たズエンさんは同僚や地元美容室からの支援を受け、憧れの晴れ着を身にまとい、故郷から約3600キロ離れた日本で門出を飾るとともに、誓いを新たにした。

 ズエンさんは昨年1月に技能実習生として来日。以前から日本の文化や景色が大好きで、「行ってみたい」という気持ちが強かった。その後、秋には「介護技能評価試験」に合格。相模原市で介護事業を展開するエクシオジャパンに正社員として雇用され、週に5日間勤務している。

 「相模原の人はみんな優しく、細かいところまで指導してくれる」と同僚や上司のありがたみを口にするズエンさん。日本語も熱心に勉強し、「日本語能力試験」ではN3という日常会話レベルの等級を取得。さらに高いレベルにも挑戦しているといい、「もっと慣れて会話力を上げたい」と意気込む。同社で働く外国人をサポートする矢島義明さんが「施設の貴重な戦力となっている優秀な職員」と話せば、同僚の女性は「気配りができてしっかりしている。施設の中では愛されキャラで、頑張って仕事を覚えようとしているのがわかる」と、働きぶりに信頼を寄せる。

「人生で一度きり」

 そんなズエンさんに11月、市から成人式の案内状が届く。ベトナムが定める成人年齢は18歳。祝い事とされる風習はないため、日本の祝儀の存在を初めて知り興味津々に。「人生で一度きりだから、振袖を着てみたい」。その一言が同僚たちの心を揺さぶり、支援へと突き動かした。

 振袖はレンタルも検討していたが、同僚の女性が「娘が着たものがあるから」と、振袖をはじめ長襦袢や帯、バッグなど一式を貸与。さらにヘアメイクや着付けはその女性が通う上溝の美容室の渡辺そらさんが相談を受けて「二つ返事」で協力することを快諾した。「かわいくなることは楽しいし、日本の文化を知る機会にもなるので力になりたいと思った」と渡辺さん。当日は会場まで同行し、写真や動画の撮影にも応じた。

 併せて、故郷の家族に仕送りをしながら暮らすズエンさんへ、支度にかかる費用を援助しようと施設内では「プリンセス募金」と称した募金活動を実施。設置された募金箱には支援に賛同した同僚や同社からの祝い金が集まり、費用の半分以上を工面できることに。同僚のみならず、会社も巻き込んだ熱い思いを式の直前で知ったズエンさんは「本当にびっくりで感動した。これから仕事でたくさん恩返ししたい」と感謝を口にした。

 そして迎えた成人式当日、きつく締められた帯や履き慣れない草履に「痛かった」とおどけるも、「眠れないくらい楽しみにしていたので、着られてうれしい」と、とびきりの笑顔を見せる。市民会館に集まった仲間たちの華やかな様子を前に「きれい」と目を輝かせていた。

 式に出席した後は、支援してくれた同僚らに晴れ着姿を見てもらおうと、そのまま施設へ。振袖を貸した女性は「ズエンさんだから協力したいと思った。親のような気持ち。役に立てて良かった」と、凛としたズエンさんに感慨深げな面持ち。施設の利用者たちも共に喜び、写真撮影を楽しんだ。

日本での目標 胸に

 遠く離れた故郷の母や双子の妹、祖母にも写真を送って報告。家族は口々に「日本での様子や伝統文化についてわかり感動した」「きれいだね」「かわいい」と声をかけてくれたという。

 たくさんの温かい思いに支えられ、新たな門出に立つことができたズエンさんの今後の目標は「日本とベトナムをつなぐ仕事をすること」。技能実習で在留できるのは残り2年だが、「今度は留学で日本に来てみたいし、他のビジネスにも挑戦してみたい」。

 異国の地・日本で改めて社会人としての一歩を踏み出したズエンさん。多くの人の心を動かしてきたひたむきな姿勢で、日本とベトナムを結ぶ架け橋となるよう、晴れの日に固く誓った。

着付けに協力した渡辺さん(右)
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