横山の住宅街に店を構える「菓子工房くろさわ」(横山3の33の1)。今年で創業56年目を迎える老舗和菓子屋を切り盛りするのは2代目の黒澤章典さん(55)だ。大賞の一報を受け「昨年は取れなかったので本当にうれしい」と満面の笑みを見せ、「これも皆さんのおかげ」と感謝の言葉を添えた。
看板商品は先代の頃からお馴染みさんに愛される「的祭最中」と「ひばりの里」。「的祭最中」は市指定の無形民俗文化財・田名八幡宮の的祭がモチーフで、刻み栗入りの小倉餡がたっぷりつまった一品。まろやかな白餡に相模原産の鶏卵を練り合わせた洋風の焼き菓子「ひばりの里」も、ほんのりとチーズが香る人気商品だ。どちらも当初の品からは少しずつ変化をしているという。「温度や湿度など気候の変化による配合や調整ではなくて、時代に合わせて少しずつですが変えているんですよ」
時代とともに進化
黒澤さんが生まれた年に店が開業。幼いころから和菓子に囲まれて育ち、細かい作業が好きだったこともあり、自然と和菓子職人の道へ。先代の父が直接指導することは無かったが、近くで自ら見て学んだ。2代目を継いだのは約10年前。「お客さんの反応が直に返ってくるのでやりがいがある。家業で良かったと感じますね」
毎日、通常は朝6時から作業場に立ち、「慌てず丁寧に」を心がけて和菓子づくりに励む。疲れるとミスも増えるので残業も極力しない。「すべては和菓子への思い。ベストな状態で和菓子づくりをしたいんです」
長年、くろさわの味を愛し支えてくれたお馴染みさんの足がコロナの影響で少し遠のいた時、SNSで商品や作業風景を発信しようと提案したのは、店で修行中の息子だった。現在もほぼ毎日、情報を発信。それを見て店を訪れる新し顧客も増えている。昨年は小売店への卸も始めた。「今はまだ私が中心ですが先々、息子や若い人の発想を取り入れながら、新しいことにもっとチャレンジしていきたい」。時代と共に進化し続ける、老舗和菓子店から今後も目が離せない。