さがみはら南区版 掲載号:2011年9月1日号
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慈音君 "命きらめく" 16歳・重度の運動機能障害 心肺停止から回復

8月10日、病室にて。母・里恵さん撮影
8月10日、病室にて。母・里恵さん撮影

 南区当麻にある蓮向寺(れんこうじ)住職/音楽家・北条不可思(ふかし)さん(49)の長男慈音(じおん)君(16)が7月21日、自宅で呼吸困難に陥り意識不明の重体となった。慈音君は重度の脳性マヒによるハンディー(四肢体幹機能障害)を抱える。1時間以上、心肺停止の状態が続いたが、北里大学病院による救急救命治療のかいあって慈音君は、一命を取りとめた。

 「現実は厳しく、意識の回復は望めません。延命治療の希望もいたしません」。不可思さんは7月29日、自身のブログにそう綴った。

 慈音君は1歳のとき、脳性マヒと診断された。常に筋肉が緊張しているため、体を自由に動かすことができない。言葉も発せられないが、足の指を器用に動かし、五十音ボードやパソコンを使い、意思を伝えることができる。指に筆をはさみ、独特の色彩の絵も描く。

 不可思さんはお寺のお坊さんでありながら、SSWとしても活躍する。”仏教の心”を歌にのせ、CDを発表しているほか、日本各地、また海外でも公演を行っている。その活動の根源には慈音君の存在がある。

 妻・里恵さんと障害児のケアをする、過酷な毎日。慈音君がまだ小さかったある時、「もうやめよう」と思い立ったことがある。しかし、里恵さんは反対した。「自分のせいでお父さんが音楽をやめたと知ったら、彼はきっと悲しむはず」。不可思さんは再びギターを手にとった。その公演は「縁絆(えんばん)コンサート」と呼ばれる。縁と絆―。障害のある/なしは関係ない。伝えたいのは、慈音君が教えてくれた”尊厳ある命を大切にする心”。コンサートの始まりを告げるベルの音は、いつも慈音君が鳴らしている。

2日目には安定

 心肺停止後、1時間が経った。「16年間、重い荷物を背負いながら、生きてくれました」。二人はその時、覚悟をしたという。「一両日中に負けたら終わりです」。緊急入院した日、医師から告げられた言葉だ。しかし、慈音君はそこから強い生命力を見せる。入院2日目には自呼吸が回復、容態が安定。「目で反応した」「足を動かした」と、ささやかな変化が新たな原動力となり、命の鼓動は周囲に喜びを生み出していった。不可思さんは何度も言う。「幻想だって構わない」。

 慈音君は今後、北里大学病院からかかりつけの病院を経て、在宅を目指す。今回の件で筋肉が緩和したため、これまでと違う発見もあったそう。「再生は望みません。これからは”新生・慈音”です。新たに構築されていく『あれこれ』を楽しみながら、あせらず、急がず、日常の暮らしを始められることを夢見ています」
 

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