相模原市中央区由野台の宇宙航空研究開発機構(JAXA)相模原キャンパスが移転する可能性が、このほど明らかになった。国が進める政府機関の地方移転の対象に同施設が挙がったもので、秋田県、岐阜県が誘致へ名乗りを上げている。9月の定例会議の本会議でも取り上げられ、市では県と共に、国に対して存続を要望していく構え。現時点で移転は正式な決定ではないが、同施設は相模原市のまちづくりで中心的な役割を果たしており、移転するとなれば大きな打撃となる。
9月28日に開かれた市議会9月定例会議の本会議では、小野弘市議(自民)が一般質問の中でJAXAの移転について取り上げ、「JAXAは本市にとって不可欠な存在である」と訴えたのに対し、加山俊夫市長は「存続できるよう、県と共に要望していきたい」と、今後の対策に言及したことから問題が明るみになった。
発端となったのは、国が取り組む地方創生の一つである政府機関の地方移転。東京の一極集中是正を目的に、内閣府は政府機関などを地方移転の対象とし、今年3月、東京圏(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県)以外の道府県に誘致希望調査を行った。JAXAの誘致に対しては、秋田県、岐阜県が名乗りを挙げた。
秋田県能代市には、JAXAのロケット試験場があり、同県はロケットエンジン研究部門の誘致を希望。県の担当職員は「ロケット部門における研究・実験を加速させていきたい」と話した。一方、岐阜県は施設全体の誘致を希望しており、県の担当職員は「県内には航空宇宙産業の関連企業が集積しており、誘致を機に産業をより活性させていきたい」としている。
内閣府は、今後各都道府県へヒアリングを実施。専門家の意見も聞きながら、移転後のメリットを見極めた上で、来年の3月をめどに移転施設を決定していく方針だ。
存続へ署名活動も視野
相模原のまちづくりに、JAXAが関わり始めたのは1989年。JAXAの前身となる宇宙科学研究所が目黒区駒場から相模原に移転したことに起因する。当時、まちづくりのきっかけを探していた多くの人がJAXAに着目。その一人であった、淵野辺の商店街・にこにこ星ふちのべ協同組合の茅(かや)明夫前理事長は、「銀河をかけるまち・ふちのべ」と銘打ち、淵野辺を活性化させる取り組みを進めていった。そうした中、2010年に小惑星探査機「はやぶさ」が無事帰還すると、日本中にはやぶさブームが沸き起こった。
これを機に、市内では茅さんら民間に加え、行政でもはやぶさを生かした取り組みを強化。2013年からは市内の公立小中学校で年に一度、宇宙をモチーフにした料理が振る舞われる「はやぶさ給食」が実施され、翌年にはJR横浜線淵野辺駅の発車メロディが「銀河鉄道999(スリーナイン)」の主題歌に変更されるなど、宇宙と相模原を結びつける事業が次々に打ち出された。
こうした民間、行政の取り組みがようやく市民レベルに浸透し、年に一度行わるJAXAの特別公開には二日間で約1万3千人が足を運んでいる。そんなタイミングでの今回の移転問題。移転の可能性があることに関し茅さんは「地域の実情を知らない中での国の進め方に憤りを感じる。存続に向け署名活動も検討したい」と話した。
市でも同施設を「代替のできない施設」と認識しており、危機感を募らせている。移転するとなれば、まちづくりの根幹を揺るがしかねないだけに、今後市では、これまでの取り組みを強くアピールした上で、市にとって不可欠な施設であることを県とともに訴え、移転を阻止したい考えだ。
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