第69回毎日書道展(主催:毎日新聞社、毎日書道会)で最高賞にあたる「会員賞」にこのほど、南区古淵の伊藤さと子さん(69)が、かな部門で選ばれた。同賞は全国から26人(かな部門は5人)が選ばれており、県内では唯一の受賞となる。
涙の坂を行き来し
伊藤さんが書に出合ったのは中学1年生の頃。自宅のあった東京・神楽坂からほど近い、書道教室を母に勧められた。「まさか有名な方だなんて思いもしなかった」が、そこは書の巨匠と言われた筒井敬玉さんの教室だった。「大変厳しい先生で。教室まで続く通りは涙の坂と言われたほど」と伊藤さんは振り返り懐かしむ。しかし、続けることが出来たのは「少しでも師の書に近づきたい」という一途な憧れ。受験や結婚、出産など人生の転機が訪れても、ひたむきに書の道を歩んできた。
最高の瞬間逃さず
書を仕上げる時、いつでも良いという訳ではない。光の加減や紙質の具合で夜間や雨の日は不向きであるとし、すべてが揃った時間を狙って、詩の情景が表れるようリズムを持たせて一気に筆をおろす。題材の選定から筆を変え、紙を変え、試行錯誤の上「この一枚」が出来上がるまでに約5カ月かかった。受賞の知らせがあった7月5日、電話で届いた一方に実感がわかず、程なく電報も届いて、家族は喜びに包まれた。
自分の色出せるよう
現在、神楽坂と自宅の2カ所で幼稚園児から大人までの生徒を受け持つ。少数精鋭で、目の届く指導を心がけるのが伊藤さんの長年のスタイルだ。「何度も書けば上手くいくというものでもない。子どもの集中は20分程度ですから」。その日の気分や調子に合わせ、一枚でも集中して書けるよう指導する。同時に、書に大切な礼儀や作法も畳の部屋で伝えている。伊藤さんの義嫁や孫なども書を学んでおり、書道が家族の絆を一層深めている。
最高賞を手にした今回を一つの区切りとしながら、「これからは作家として自分の色を出せれば。終わりがあるようでない、一生のものだから」と志を新たにした。
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