小説家として自身の集大成となる3部作を刊行している 島田 武さん 二本松在住 83歳
人本来の在り方を考えたい
○…「人の在り方を長年考え続け、小説の中で訴えてきました」。これまでに書き溜めた社会派小説の中から、集大成として3部作を文芸社から刊行した。15歳で妊娠した生徒と教師夫婦の葛藤を描いた第1部の『不妊』に続き、2月には母親をテーマにした『姥捨』と『雪の村』という2つの短編小説を収録した第2部を発行。「編集者と相談して、読みやすいものを選択しました。私の小説を読んで何かを感じて頂けたら」と力強く話す。
○…長野の農家の三男とし生まれ、少年時代は貧困に苦しんだ。作文が得意だったこともあり、終戦後に世の中の矛盾を簡単なエッセイなどにして書き記した。その後、国家公務員として働くかたわら、趣味で小説を書き続け、文化勲章受賞作家でもある丹羽文雄氏に師事。57歳で早期退職をして以来、プロの小説家として、本格的に執筆活動に取り組んでいる。「一つのテーマを決めてから小説を書きます。大きなことを言えば、世の中を良くするきっかけになればと思って執筆しています」
○…相模原へは38年前、都内から移住。地域住民のつながりが強く、保守的な面の大きさに少し戸惑ったが、恵まれた自然など過ごしやすい土地だと感じたという。「この辺りも便利になり、かなり環境が変化しました。昔は2階から丹沢山系がきれいにみえたのですよ」と懐かしむ。
○…14歳で満州開拓民として、終戦の2カ月前に移住。終戦後約2年間、中国や韓国を渡り歩き、流浪という極限の中で、人の暖かさや醜さを嫌というほど目にしたという。「終戦を機に180度価値観が変わる衝撃的な現実。あの頃の経験が執筆の原点です」と振り返る。5月には、究極の夫婦愛を描いた『吾妻はや』と、国というものを問うた『墓標』を収めた第3部を刊行する予定だ。「集大成の作品なので、多くの人に読んでもらえたら嬉しいですね」と話した。
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