相模女子大学の学長に就任した 風間 誠史さん 八王子市在住 57歳
仁をもった地域人育成を
〇…「択(えら)んで仁(じん)に居らずんば、いずくんぞ知を得ん」――。学長就任時、自身の専門である古典文学から論語の一節を引用し、そう所信を表現した。訳せば「自分の居場所を仁(思いやり)のある場所にしなければ、どうして知を得る(学ぶ)ことができるだろうか」。「仁」と「知」が結びつく場所が大学であるようにと願いを込めた。『見つめる人になる。見つける人になる。』。2010年から掲げている大学のスローガンに重ね合わせ、大学の歴史を受け継ぎ、職務にまい進していく。
〇…東京で生まれ、高校3年時に鵜野森へ。「その時から相模原に縁があったのでしょう」。東京都立大学へ進学、そこで受けた授業が進むべき道の指針に。「つまるところ、人との出会いが全て」。出会った恩師の知の深さ、偉大さに感銘を受け、文学の道を志した。都内の定時制高校で教諭を務めながら、江戸時代の日本文学研究に没頭。93年、同大学短期大学部の講師に就任した。
〇…多摩センターの自宅から大学まで、通勤で片道50分かけてロードバイクを走らせる毎日。年に一度、佐渡のトライアスロン大会に出場して10年目になる。「走り過ぎて腰を痛めてから水泳も自転車もできるトライアスロンを始めた」という根っからのスポーツマン。職務の合間を見つけてはトレーニングに汗を流す。「おかげで風邪もめったにひかないですね」。現在は4月下旬の宮古島大会へ向け最終調整段階という。
〇…「里は仁なるを美と為す」。東日本大震災の翌年、新年に学生が書いた「書」から目が離せなかった。「村、里の本当の美しさは、(景観などでなく)そこに住んでいる人(仁)で決まる」。地域の中で結びつく大切さ、地域社会で担う女性の役割――。すべてが壊れ大きく変化してしまった中で、なお変わらずに、逞(たくま)しく誇らしく生きる土地の人々が重なった。いずれ地域に出て貢献していく女性たちを、「仁を以って」育んでいく。