第54回伊勢神宮奉納書道展で最高賞の一つ文部科学大臣賞を受賞した 加藤 恵子さん 元橋本町在住 66歳
感謝の思い筆に込めて
○…過去10年以上出品を続けてきた思い入れの深い書道展だった。出品した作品は、中国の漢詩選集に収録されている、友との別れを詠んだ七言律詩。自らが職場で経験した同僚との別れに思いを重ねて筆を進めた。何度も書き直し、締め切り直前まで完成度を追い求めたが、最後まで自分が納得できる作品は書けなかった。不安と諦めが交差していた中での受賞に「現実のこととは思えなかった」と喜びの瞬間を振り返る。
○…生まれも育ちも相模原。短大を卒業後、定年まで約40年、栄養士として小学校で働いた。書道は小学生の頃に少し習った程度。それ以降、筆を握ることはほとんどなかった。再び書道を始めるきっかけとなったのは職場の同僚と交わした「年賀状とか、きれいな文字で書きたいね」といった何気ない会話。30歳を過ぎていた。知人の紹介で書道会に入会し、稽古を重ねた。20年近くのブランクに、最初は戸惑ったものの、「少しでも上手く字を書きたいと思って。そしてなにより先生方に恵まれ、気づいたら長く続いていた」。それから30年、自ら歩んだ書の道を懐かしく振り返る。
○…書道と並んで日々の楽しみの一つが、市が主催するウォーキングや体操教室。運動不足を実感し、健康づくりを目的に通っている。参加する毎に顔なじみも増え、参加者との雑談も大切な時間。周囲の支えも力になる。今回の受賞で、近くに住む兄弟がお祝い会を開いてくれる。「近くにいるからこそ、こうでもしないと集まらないんですよ」と笑みを浮かべる。
○…30年以上続けてきた書道は今後も取り組んでいく予定。所属する書道会では、長年活動を続けた人に対する表彰がある。「賞をもらえるよう、先輩方のように年を重ねていきたい」と新たな目標を見据える。「今は感謝の気持ちでいっぱいです。多く人の支えがなければ今回の受賞もなかった」。感謝の思いを筆に込め、日々稽古に臨む。