”乳がん”と入力すれば手術前後の画像から壮絶な闘病記まであらゆる情報が溢れるネット社会。様々な情報を目の当たりにし、不用意な怖さを抱いて相談する人は多いという。
NPO法人「キャンサーネットジャパン(CNJ)」の乳がん体験者コーディネーター(BEC)として市内外で乳がん患者やその家族の相談・支援を行っている村上利枝さん(63)。自身も14年ほど前、乳がんに罹患し、右胸の部分切除から全摘、乳房の再建を経験。ホルモン治療を経て、現在も年に1回は検診に通う”患者”の一人だ。これまで普通にあったものがなくなってしまった現実を突きつけられる毎日、先の見えない副作用に「卑屈になった」時期もあったが、約10年前、夫の勧めで勉強会に参加。BECの資格を取得後、講演の依頼を引き受けたのを皮切りに全国での講演活動や市内外での相談・支援に従事するようになった。
「正しい知識を得ることが大切」。これからは、患者が自身の生き方によって治療の仕方を考え、選ぶ時代。相談を受ける際は、自身の経験をもとにしながらも、患者本人が病気を理解し、自分の考えをまとめ、「何のためにこの治療が必要なのか」を納得してもらう機会になるよう心掛ける。
他のがんと違って10年という長い経過措置が必要とされる一方、早期発見・早期治療が有効な”乳がん”。だからこそ正しい理解とともに、怖いと思っても検診に足を運ぶ「少しの勇気」で、「自分の命を救ってほしい」。そう強く願う。