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市長インタビュー 対話を大切にした市政を 災害、教育問題に注力

政治

公開:2020年1月1日

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インタビューに答える本村市長
インタビューに答える本村市長

 2020年の年頭を飾る企画として、本紙では本村賢太郎市長に新春インタビューを行った。本村市長は相模原市の未来に対する構想や考え方などについて率直に語った。(聞き手/本紙さがみはら緑区編集長・木村正博)

 ―早速ですが、昨年(2019年)を振り返っての感想をお聞かせ下さい。

 昨年4月22日に市長として初登庁させて頂いて以来、市民の皆様との「対話」を大切に市政運営を進めてきました。まず、市長室の扉を開放し、顔の見える市長として、多くの市民の皆様とお会いし、7月からは「まちかど市長室」を実施し、市民の皆様と対話いたしました。また、障害者支援施設「津久井やまゆり園」の事件が起こって3年が経ちましたが、改めて「共生社会の実現」の必要性を感じています。子どもの教育に関しては、私自身シングルマザーの家庭で育った経験がありますので、家庭環境にとらわれないで、勉強や部活動ができる環境づくりを応援していきたいと思っています。そのためには、親の収入によって進学の有無が左右されることのない、すべての子どもにチャンスが与えられるようなしっかりとした相模原教育の確立が大切です。

五輪開催を復興の象徴に本村市長が市政を語る

 昨年の出来事として忘れてはならないのは、10月の台風第19号により記録的な豪雨に見舞われ、特に緑区内の中山間地域においては、8名もの尊い命が奪われるとともに、家屋の倒壊・浸水、道路の破損等、大きな被害を受け、市民生活に重大な影響が発生したことです。本市でこれだけの自然災害を受けたのは、私が知る限り初めての経験です。11月11日には「復旧・復興推進本部」を設置し、被災者の生活再建支援、社会インフラ等の復旧、地域経済の復興支援、災害対応の検証の4つの基本方針に基づき取組を進めています。被災した皆様に寄り添って、安全・安心な生活を取り戻せるよう、引き続き、精一杯取り組んでまいります。また、防災・減災の取組としては、防災無線が聞こえづらいといった声もあります。そういった地域の方々には室内防災ラジオなどをお持ちいただくなどの対応をして、今回の経験を活かしていくことも大切だと考えています。

観光、子育て、人権選ばれるまちに

 ―市長が掲げるSDGsの啓発、シビックプライド条例と人権条例の制定についてお聞かせ下さい。

 SDGsに関しましては昨年3月に、相模原青年会議所と、12月に津久井青年会議所と協働推進宣言を行い、連携して普及啓発事業を実施しています。市長就任以降は、市民若葉まつりなど各種イベントで、SDGsバッジを配布するなど、普及啓発に努め、市職員もワークショップ形式での研修などを行ってきました。私自身もラジオ番組に出演したり、シンポジウムやフェスタに出席して普及に取り組んでいます。しかし、その達成に向けては、市民や企業等と一丸となった全市的な取組を行う必要があり、そのためには市民一人ひとりに理解を深めていただくことが重要です。例えば、お店で牛乳を買う時に、賞味期限まで1週間と2週間の牛乳が並んでいれば、ほとんどの人は2週間の牛乳を購入すると思いますが、SDGsの精神からすると、食品ロスをなくすために、1週間の牛乳を進んで購入する意識が必要です。また、相模川に鮎釣りにいったとしても、3人家族であれば、3人が食べる分だけ釣るというように、持続可能な社会の実現のためには、取りつくさない、食べつくさないといった意識が大切になります。こういった意識を醸成するため、今年はSDGs専用ホームページを立ち上げるとともに、広報紙やSNSを活用した情報発信等により、これまで以上に周知啓発を図っていきたいと思います。

 シビックプライド(市民の本市に対する誇り、愛着等)の醸成に関しましては、定住人口の確保や地域の活性化につながり、非常に重要なことと考えています。昨年に実施した「市政に関する世論調査」では、市に愛着を感じていると回答した市民は約7割となっています。これまで、私が市民との対話を通じて、本市には他市にない多彩な魅力や多くの資源があるにもかかわらず、市民に十分に伝わっていないという印象があります。例えば、南区の方が温泉に行きたいと思っても、箱根や湯河原を思い浮かべ、緑区に藤野やまなみ温泉や青根緑の休暇村いやしの湯など素晴らしい温泉があることを知らないケースがあります。逆に緑区の方は、南区で日本一の相模の大凧まつりが毎年行われていることを聞いたことがあるけれど、見たことがないといったことがあります。こうした状況を踏まえ、条例制定についても取組を進めています。条例の制定にあたっては、外部有識者等で構成する検討委員会を設置し、今後、現状分析や課題整理などを行い、条例の内容を審議いただきます。そのほか、シンポジウムの開催などにより広く市民意見をいただきながら取り組んでいきます。さらに、子育て世代の方に選んでもらえるまちづくりが重要となります。財政的な支援も必要ですが、子どもたちの学びの環境を整えることに注力し、家庭環境や所得によって教育の平等な機会が奪われることのないような取組みが必要です。「子ども若者未来基金」を活用して実施している高等学校等の生徒への奨学金は、300人位の生徒に年額10万円ずつ給付しています。教育は防災と共に非常に重要な政策と考えます。

 川崎市でも取り組んでいる「人権条例」の制定ですが、性別、年齢、障害の有無、民族や国籍等の違いにかかわらず、一人ひとりが、かけがえのない個人として尊重され、お互いの人権を認め合う共生社会の実現が重要です。特に相模原市では津久井やまゆり園事件があったこともあり、共生社会実現のために、事件を風化させない取組が必要です。そのため、昨年1月に改訂した「相模原市人権施策推進指針」に基づき、あらゆる施策に人権尊重の理念を反映させるとともに、人権に関する教育や啓発などに取り組んでいます。条例の制定に向けては、昨年11月に市の附属機関である人権施策審議会へ条例の制定について諮問し、審議をお願いしていますので、令和3年度をめどに方向を決めていきたいと思っています。

 ―災害復旧の取組についてお聞かせ下さい。

 相模原市制施行以来、最大規模の災害となった台風第19号の被災者支援のため、多くのボランティアの方にご協力いただき感謝しています。他の自治体からも多くの協力を頂きました。今回の災害で、温暖化の影響もあり、台風などの風水災害の危険が高まっていることがわかりました。地震対応のルールはありましたが、風水害への対応に向けたルール作りが必要だと感じています。市民の中には避難所と避難場所の違いがわからない方も多いと思います。避難所には毛布や飲食などの備蓄品はありますが、避難場所にはありません。こうした違いを知っていくことが大切ですし、災害に対する備えが大切です。

 今回被害を受けた津久井地域の自然は、お金では買えないかけがえのないものです。何としても元の形にもどして観光施策につなげていきたいと思っています。被害の特徴の一つに土砂災害がありましたので、改めて山の手入れの大切さを感じました。被害を受けた中小企業の支援や、道志川流域や相模湖などのキャンプ場の復旧・復興など観光産業への支援も大切です。1日も早い復旧・復興の実現に取り組んでいるところです。

 ―オリンピックに向けた取組についてお聞かせ下さい。

 待ちに待った東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会がいよいよ今年開催されます。7月25日に男子、26日に女子の自転車ロードレース競技が行われ、男女共に市内を約30Km走ることになっています。コースとなっている国道413号は、昨年の台風第19号によって甚大な被害を受け、一時は開催を危ぶむ声も聞かれましたが、国をはじめ多くの皆様の協力をいただきながら復旧工事を進め、レース開催への見通しが立ちました。オリンピックの開催が、被災された地域の皆様の復旧・復興のシンボルになると考えています。レースの一つの売りは、チケット無しでも観戦できる競技であることです。大会に向けては、昨年7月21日に自転車ロードレース競技のテストイベントがオリンピック本番とほぼ同じコースで行われたほか、11月にも、相模総合補給廠の共同使用区域で行われた、サイクルフェスティバルで、プロ選手によるエキシビションレースを開催するなど機運醸成に向けた取組を進めてきました。

 さらに、オリンピック開幕前の6月30日には、聖火リレーが本市においても実施されます。パラリンピックに関しても、何か市でイベントが開けないか検討しています。本市はブラジルとカナダ代表の事前キャンプ地となっており、相模原ギオンスタジアムやさがみはらグリーンプール、相模湖漕艇場などの市内施設で、オリンピックに出場する選手たちが、金メダル獲得を目指しトレーニングを行う予定になっています。また、パラリンピックの事前キャンプの招致も引き続き行うなど、オリンピック同様、機運を高めていきたいと思っています。オリンピック・パラリンピック終了後にも、選手村のヴィレッジプラザに提供した津久井産材の返却後の活用など、大会後のレガシーについてもしっかりと検討を進めていきたいと思っています。

リニア新駅を観光施策の起爆剤に

 ―リニア中央新幹線新駅と相模総合補給廠一部返還地の土地利用についてお聞かせ下さい。

 橋本駅周辺に設置される神奈川県駅について、昨年11月に起工式が行われ、いよいよ駅設置に向けた取組がスタートしました。まず大切なのは、リニアを契機にして、橋本駅を乗客・観光客が降りたい駅にすることです。橋本駅から10分でホタルが見える小松・城北地区があり、秋には宮ヶ瀬湖の紅葉や相模湖のボート、石老山や陣馬山、温泉など魅力的な観光資源が数多くあります。これらをまだ活かしきれていないので、特色あるまちづくりを進め、首都圏南西部における中心的な地区として求心性の高いまちづくりを進めるため、道路や駅前広場等の都市基盤の配置の検討や鉄道事業者等の関係機関と協議を行っているところです。また、鳥屋の関東車両基地建設に伴う、リニア回送線の旅客化ですが、開通まではハードルが高い部分が多くありますが、ぜひ計画を進め、おしゃれな店を誘致して女性や子どもが集まるような地域にして、有効な観光資源になるよう努力していきたいと考えています。

 補給廠返還地の土地活用については橋本地区との一体の整備が必要と考えております。令和4年度には「国有財産関東地方審議会」に諮られるようにしていきたいと思っています。平成28年に策定した「相模原市広域交流拠点整備計画」に基づき、調査・検討を行ってきましたが、課題もあり、具体的な施設等の決定には至っていない状況です。そうした中、ホームタウン4チームからスタジアム構想が出されましたが、こうしたように市民が自ら動くことはとても大切です。私見となりますが、近隣には多くのショッピングモールがあるので、独自の特色を出すため、高度医療を行える施設を集めたり、外国語に特化したまちづくりや芸術や文化のまちづくり、防災拠点を軸にしたまちづくりなどを進めるのも面白いと思っています。

 ―最後に市民の皆様にメッセージをお願いいたします。

 昨年は初登庁から駆け足の時間を過ごしてまいりましたが、市民の皆様と対話をしながら開かれた相模原市政を構築するべく活動してきました。今年も1年間市民との対話を楽しみながら、そしていろいろな角度から意見を頂きながら、次の世代に確かなタスキをつなげられる取り組みを進めていきたいと思っています。今年はいよいよ東京オリンピック・パラリンピックです。国道413号を使って、自転車ロードレース競技を成功させ、復興・復旧のシンボルとなるように努めてまいります。また、やまゆり園の事件から4年目を迎えますが、風化させない取組み、共生社会の実現をしっかり果たしていきます。さらに、人権やシビックプライドに関する条例制定に向けても準備を進めていきます。市民の皆様一人ひとりが自分たちのまちに誇りや共感、郷土愛が育める相模原を次の世代にしっかりとつないでいきたいと思っています。今年も1年間、72万市民が「ワンチーム」で、頑張っていきたいと思いますので、皆様の声を聞かせて下さい。そして一緒に相模原市をワクワクするまちになるよう盛り上げていきましょう。

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