11月12日から25日(水)まで、全国で「女性に対する暴力をなくす運動」が始まっている。18年間の結婚生活の中で、イタリア人の夫からの精神的・肉体的暴力に苦しんだ倉原佳子さん(声楽家/市内在住)は、当事者の一人としてその当時のことをこう振り返る。
声楽の勉強のため訪れていたイタリアで彼と出会い、1995年に一緒になりました。今でこそ彼との関係の異常さを感じますが、当時はまったく気づかなかった。それは「ある日突然」ではなく、ゆっくりと真綿で首を絞められるようだったからです。
思えば、「君のことが心配だから」と片時も離れず、24時間一緒に行動していました。生活費の管理も全部夫。2人の子どもに恵まれ、初めのうちは異国で暮らす私への気遣いかと思っていましたが、ときどき夫は瞬間的に爆発し、大声で私を怒鳴りました。なぜ怒っているのかを何十分、何時間とかけてとうとうと説明します。「お前がこうさせる」「なんてダメなやつなんだ」。私はというと、怒鳴られたショックで放心状態になり、とにかく何も考えられなくなりました。子どもたちといても、いつまた怒られるのだろうかという不安で精神的に追い詰められていきました。DVには緊張期、爆発期、ハネムーン期というサイクルがあるといわれていますが、夫の場合も「必ず更生する」と謝罪し、甘い言葉を繰り返したものでした。
2011年、一度は遠ざかっていた声楽の世界でようやくチャンスが巡ってきました。スキーワールドカップの開会式でイタリア国歌を歌うことになったのです。このような大会で外国人が斉唱したのは初めてのこと。しかし喜びも束の間、夫からの攻撃的な言動は激しくなり、翌年、何度目かの身体的暴力を機に、親子3人でシェルターに逃げ込みました。
数年前に離婚は成立したものの、子どもたちとは引き離され、長年辛い裁判が続きました。幸い、私には歌があります。生活のため5年前に日本に拠点を移し、SNSやホームページを通してファンの方々に支えられながら大好きな声楽を続けています。生き残ったからには、この経験を誰かの気づきに役立てたい。どうか、苦しむ人がひとりでも減るよう、心から祈っています。
※相談は市配偶者暴力相談支援センター【電話】042・772・5990などへ(午前10時から午後5時まで/火・木は6時まで)
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