市営上九沢団地で運営されている子ども居場所づくり「くすのき広場」代表の 吉澤 肇さん 上九沢在住 72歳
地域の力で課題を解決
○…7年前、転入した上九沢団地は荒れていた。迷惑行為を繰り返す少年らは咎めれば反発した。対策は必要だが、彼らを排除しても根本的な問題は解決しない。朝の旗振りなどで子どもとふれあううちに気づいた。「必要なのは寄り添うこと。子どもの声を聴くこと」。そんな思いから、民生委員や市社協など各所の協力のもと4年前、“子どもの居場所”として、団地内の多目的室に小中学生が集い地域ボランティアや学生らとふれあう『くすのき広場』を開設した。
○…月3回、毎回30〜40人の子どもが参加。初回から欠かさずおにぎりを振舞うなど「食育」にも目を向け広場は子ども食堂としての性格も併せ持ってきた。相模原の子どもの朝食欠食率が国県平均より高いとされる中、市の呼びかけにより7月初旬、市内企業など有志からパンや飲料の提供を受け、登校前の小中学生に対し初めて“朝食会”を実施。「朝から子どもがキャッキャと、場が明るいんだよ」と目を細める。
○…川崎市出身。「何かしなきゃ」と常に自ら仕掛ける性分で、書籍販売の営業マンとして名を上げると一転、陶磁器を売る事業を興し、多くの名匠と交わり人を見る目を養った。「世のため人のため」と仕事に生きたが9年前、妻がくも膜下出血で倒れたのを機に引退。終の棲家と選んだ先に今度は地域の課題解決に生きる日々が待っていた。
○…毎日子どもとふれあうが皮肉にも実の息子二人との記憶は多くなくそれが心残りとぽつり。だが向き直ると「団地の高齢者には経験や技術を惜しみなく子どもに伝えてほしい」と熱弁。それが地域の力、地域での子育てと語気を強める。3年前に肺がんを患い体力的にも後継を渇望するが加入低迷する自治会の立て直しなど、「何かしなきゃ」は尽きそうにない。