「鯨人(くじらびと)」(集英社新書)を上梓した写真家 石川 梵(ぼん)さん 中町在住 50歳
祈り・コアを撮り続ける
○…「祈りを通して世界の人々を知る」。写真家として根底に流れるテーマだ。カメラを始めたころ、『メメント・モリ』『印度放浪』など多数の著書を持つ藤原新也氏の本に刺激を受け、カメラ片手にインドを旅した。だが「圧倒」された。その後も当時のソ連が侵攻したアフガニスタン取材でも「圧倒」される。どちらも生死が隣にあり、そして人々が信仰を重んじ暮らしていた。帰国後、「日本のことを知らなすぎる」と感じ、日本古来の宗教・神道に興味を持つ。
○…大分県生まれ。16歳の時、プロ棋士を目指し、関根茂九段(当時八段)を師事し東京で修行する。ある時、「世界を見たい」と感じた。「将棋盤しか見てなかったからかな」。それなら「カメラマンが打ってつけ」とカメラ専門学校へ。24歳の時、海外での経験をもとに伊勢神宮をテーマにした写真集「伊勢神宮遷宮とその秘儀」を10年かけて取材した。そのうち2年間は毎日写真を撮った。自身のルーツを見つめ直しテーマが確立した作品となった。
○…「表象ではなく、コアな部分を撮りたい」。儀式そのものだけでなく、その雰囲気=気を大事にする。インドネシア・レンバタ島ラマレラ村の鯨猟を取材し始めたのは31歳から。4年後にやっと猟をする瞬間をカメラに収めることに成功する。しかし帰国後も納得できなかった。「あるもの」を撮り直すためもう一度現地へ。成功するまでさらに3年かかった。そして13年後の昨年、再び現地へ行き今回の執筆となった。約20年の月日が流れた。
○…辺境地で大自然と共に生きる人々を取り続け、帰国すると最初にするのが愛犬へのあいさつ。ドックスポーツが趣味。奥さんに助手をしてもらい裸族を一緒に取材したことも。「価値観が共有できた」という。現在は、同時進行で様ざまな対象を追っている。地球のダイナミズムを空撮する企画もその一つ。「凄いと感じなければ作品は撮れない」
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