獣医 佐草一優氏 「人もペットも日常を求める」
大震災が起きてすぐ、被災地で出来ることがあったとしたら、それは何といっても力仕事。時間があり行けていたら何時間も瓦礫の撤去をしたかった。獣医の立場でなく、一人の人間として助けたかったという。
地震直後、まず優先するべきことは人と人との繋がり合い。人間同士のケアが出来なければ動物のケアは難しい。最初は何もアクションを起こせず悔しく、行ったら迷惑でないのかと悩んだりもした。しかし、すぐに動き出す人と二の手三の手で動く人がいるので、後者になろうと思った。
震災後、体調を崩した市内のペットが急増するなか、普段と変わらず診察をすることこそが飼い主の安らぎに繋がり、それが幅広く多くの人たちに浸透していく。日常を繰り返すことを大切に、町田で声を掛け合うことから始めた。被災したペットを現地から連れてくる人も出てきて、多くの人が動物を心のより所にしていることに改めて気づいた。
震災から3ヵ月以上が経過し、被災した動物たちの健康診断や血液検査、被災者とペットとの付き合い方をアドバイスするなどのため、現在現地へ向かう計画をしている。
ペットたちは飼い主が考えているよりもはるかにショックを引きずっている。「実は、家の主は飼い主でなくペット。ほぼ24時間家の中にいる犬や猫の家に対する愛着は計りしれない」。また孤独な時間が人間よりも長いのだから、不安やパニックに最も陥るのはごく自然なことだ。激しい揺れが”大地震”であったと認知していない犬や猫でも、地震速報を耳にするだけで下痢や嘔吐をし、お気に入りの場所が少し傾いているだけでもストレスをためる。「倒れたものは元通りに直して、そっと安心感を与えてあげてほしい」と話す。
数年前に訪れた町が跡形もなく流されてしまった映像を目の当たりにした。「人間は自然に立ち向かう生物だが、あまりに犠牲が大きすぎる」と嘆く。たとえ小さな空間でも家族やペットがいるだけで大きなエネルギーを放出し、その場を温かくすることができるのが私たち人間。「決してこの震災を忘れず手を取り合って末永く支援していきたい」
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