選択 「温かい町」で再スタート 福島・浪江町から避難の夫婦
「初体験の電車のラッシュやしつこい勧誘に驚いたし嫌だった」。東日本大震災があった日、何もわからないまま飛び出し、ひと月後に町田に。図師町在住の吉田俊雄さん(75歳)と辰子さん(72歳)の夫婦は帰宅困難区域の出身だ。
震災時、東京で暮らす息子さんにようやく電話がつながった時、息子さんの一声は「なぜまだそこにいるの。早く逃げて」だった。現地には何も情報が入ってこなかった。「避難した場所が一番放射能の線量が高いところだったと後で知り、ぞっとした」と振り返る。
町田に来てすぐに集合住宅に入ったが、宗教やら新聞のしつこい勧誘にあった。「向こうでは普段から鍵もかけないしね」。そして不条理な契約を結んでしまったことも。息子さんの勧めでセキュリティの効くマンションに引っ越した。
今では地元の人たちと一緒に週1回のグランドゴルフを楽しんでいる。「ちょうど向こうでも始めたばかりだったんだよ。思い切って顔を出したらみなさん受け入れてくれて。『吉田さんは話すだけで分かるから自己紹介いらないね』なんて笑ってくれた。ここの人たちはみんな温かい」と笑う。「心は福島にあるけど、社協のサロンや避難者の集まりで同じ境遇のみんなと話すのも楽しいし、やっぱり息子・娘の近くにいたい」
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