選択 人生を変えた一瞬の決断 陸前高田市から避難の家族
「よく生きていたなと今でも思う」。震災からもうすぐ3年になるが当時のことは鮮明に覚えている。
武田恒男さん(63歳)は奥さんと92歳の父親、82歳の母親とともに津波で大きな被害を受けた岩手県陸前高田市より避難してきた。「ちょうど家族が揃っていたのですぐ車で高台に向かった。徒歩の人たちは間に合わなかったし、車で出た人も少し後だと渋滞にはまり、車ごと流された」。親戚や近所の人たちがたくさん亡くなった。高台から自分の家が流されるのをただ眺めるしかなかった。
ひと月後、妹の住む町田に。しかし慣れない土地での生活に父親が倒れてしまう。病院に入り、そこで認知症が発覚。「やはりストレスがあったのかな。でも震災の怖かったことも忘れてかえって良かったかも」。今では週5回の介護サービスを利用している。
年に一度、3月11日にお墓参りで岩手に行くが、「こんなに寒かったのか」と思う。「もう体が慣れてしまったんだね。こっちは介護や医療の施設が充実しているし、気候も良いし暮らしやすい。なにより津波の心配がないしね」と話す。「最初は母親も岩手に帰りたいと言っていたけど、もう言わなくなったよ」。今の住まいは都の借り上げで、期限は来年いっぱい。2年後また選択を迫られる。
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