市民フォーラムで行われるオペラ公演の主役を務めるテノール歌手の 及川 尚志さん 45歳
”憧れの歌声”再現へ
○…今年生誕100年を迎えるテノール歌手マリオ・デル・モナコ。「20世紀最高のテノール」と謳われる公演を再現する場の主役として舞台に立つ。その圧巻の歌声は「日本のデル・モナコ」と周囲に評されるが、本人は「一番大切なのは音楽。私の声を届けることが必要なこともありますが”作品が一番活きる形”が大事」と冷静。
〇…声変わりは10歳。中学時代は誰よりも通る声で合唱祭を引っ張った。担任の先生にオペラ歌手の道をすすめられるが「なにを言っているんだ、この人はって思いましたね」。周囲と同じように「宇宙戦艦ヤマトの曲が好き」で「斜めに物事を捉える」中学生の耳には届かなかったが、テレビで聴いたとあるテノール歌手の声が心を鷲掴みにした。「純粋で力強くて…目を離さずにいられなかったんですよね」。モナコに憧れ、声楽を学ぶことを決めた。
〇…「ソロのオペラ歌手に簡単に芽が出るわけがない」とアルバイトを続けながらひたすら技術を磨く。20代を過ぎたころ国際コンクールの本選に選出されたのを機に一念発起し、シカゴに留学。基礎から学び直し、その上で”憧れの音”を目指し続けた。そしてついに「ご縁があったんです。これが僕には大きかったかな」。憧れの一人、モスクワはボリショイ劇場の大歌手ソトキラーヴァに師事できることに。それまでのバリトンからテノールのパート変更の指示に戸惑いもするが「そのおかげ。そこから5〜6年かかったけどやっと自分に自信が持てた」
〇…帰国後、東京で初めて主役として立った舞台は偶然にもモナコが得意とした舞台「オテロ」。一定の評価を受ける現在、思うことは「本当にいい歌は全てを忘れさせることができるモノ。聞いている側も歌う側も、そんな瞬間を作りたい」。今後は「国外、日本の活動、共に大切にしていきたい。オペラの魅力が多くの人に伝われば」と深く透き通った声で優しく語った。
|
|
|
|
|
|