町田天満宮 宮司 池田泉 宮司の徒然 其の5 人草のざわめき
セリバヒエンソウ
散策で見知らぬ草の小さな種を採取した。すぐに発芽して越冬し花をつけた。セリバヒエンソウという中国原産の1年草で、関東一帯に広がってきているとのこと。また種を作れば来年も楽しめると目論んでいたら、鉢にヨトウ蛾が産卵したらしく、孵化したヨトウムシが一晩でセリバヒエンソウを食い尽くした。
かくしてヨトウ蛾の幼虫のディナーとなり、セリバヒエンソウ十数本が全滅。天敵の存在が明らかになり、日本全土で猛威をふるえるほどの繁殖力はなさそうだ。しかも鉢にはいつの間にか幼虫たちの食草になっていないアメリカフウロとブタナが陣取っていた。この鉢の上では中国産は全滅し、アメリカ産とオランダ産が割り込んだか。なんだか国際紛争に似ている。
さて我が国は
植物についても日本という国は吸収力が旺盛で、西洋タンポポのように増えすぎて既に手遅れのものもある。指定外来種として列挙されている植物も、直接農業に影響があるものは駆除がされてきたが、野山のものはいわゆる野放しで、一般の人々への周知もされないまま、外来種の繁殖は環境さえ合えばすこぶる速い。船の荷物に種が付着して来日した種類も多いが、園芸種として輸入したものの商売にならずに野生化したものもある。ハゼランや月見草などが代表例だ。
結果的に日本は植物について寛容に受け入れて、横暴な繁殖などをしなければそれなりに共存もしているし混在することを容認しているが、さて安保法案はどうだろう?
我が国が占領されずにいるのは何故か。国土が狭い上に利用できる面積は更に狭い。火山・地震・台風などの自然災害が多い。地下資源もない。先進的なインフラや技術は緻密な日本人にしか扱えない。日本の資源は技術を持った人間のみ。このように考えると戦争を仕掛けても得にならないのが日本なのだろう。
ただし不幸にも戦略拠点としての価値はある。敗戦国日本には米国の飛び地がたくさんある。進行中の安保法案改正を解りやすく言えば、米国は日本を共に武力で戦える国にしたい。その誘いにじわじわ乗ろうとしているということに他ならない。じわじわだからこそ、政府の説明が理詰めで国民には難解。突っ込みどころ満載なのに上手にかわすマニュアル完備。戦争放棄の大原則に立ち返って応戦するも、やはりマニュアルでかわす。改正ありきだからこそ成立しているような応酬に見えてくる。
しかし一方では、海外に派遣され道路整備などの活動をしている自衛隊が不意に戦闘状態に巻き込まれ、威嚇も応戦もできないまま個々に死を覚悟する場面もあるという現実。その派遣場所が今まで以上に紛争地帯に近づき、戦闘のための後方支援になろうとしている。何の抵抗もせずに死ねとは決して言えるわけもない。
反対に安保法改正案が否決されれば米国との関係が希薄になり反対側の某国々が日本に迫る。それが武力であれば日本は当然応戦できないし、米国は傍観するかもしれない。または次なるカードを仕掛けてくるかもしれない。最悪は第3のベトナムになる可能性も秘める。
国内では高校生までもがネットに呼応して、議事堂目指して行進している現状がある。人間同士が殺し合うという愚かさを、身を持って知っているからこそ戦わないと宣言した国が、戦う国になろうとしている妙な話が進行中なのだから。しかし拒否すれば戦わずに侵略される国になる危険を伴うことも事実。さらにイスラム圏では人道支援国の全てがISの敵としてリスト化され、勿論日本も優先順位の高い位置に入っている。ISの武力に比べたら我が国は裸同然。第9条を頑なに守ることが果たして日本を守ることになり得るのか。低レベルの考察は大抵ここで行き詰まる。
誰しもそうだが、生活するための日々の営みは多忙。子育てに集中していたり、身内や親類に病人がいたり、地域ボランティアがあったり、そんなこんなに日々の時間を費やしてゆく間に日本という国はうやむやでは済まない一大決心をしようとしている。
代表者によって国を動かすのは我が国自身が決めたことだから任せていればいいのだろうが、野に繁茂する雑草のような国民がいつになくざわざわしていることは確かだ。
(9月10日寄稿)
|
|
|
宮司の徒然 其の137町田天満宮 宮司 池田泉12月21日 |
|
宮司の徒然 其の135町田天満宮 宮司 池田泉11月30日 |