町田版 掲載号:2018年4月12日号
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町田天満宮 宮司 池田泉 宮司の徒然 其の39

結(ゆい)とお日持ち

 集合住宅が増えて人口が増加しても、自治会の会員は横ばい。町田市内では新しい住人や代替わりして自治会活動から離れて行く若者を何とか取り込もうと躍起になっている地域は少なくない。とにかく顔を合せる機会を作り、無理なく自然に足を運んでもらえることが大切で、罠にかかったとばかりに役割を押し付けたりすれば二度と近寄ってはもらえなくなる。

 私も聞いた話だけだが、昔は村ごとに「結(ゆい)」と呼ばれる共同作業があったという。共有する道、用水路、森林などを整備する作業を村人全員で行う。作業日の決め方は村長が何となく呼び掛けて、話し合いで調整。当日は思い思いにおやつや料理を持ち寄って集まり、わいわいと作業してわいわい語らう。そして参加は義務ではない。目立つ例では、白川郷の合掌造りのかやぶき屋根をふき替える際には、村中の人々が屋根に群がるようにして作業する。

 また、「お日待ち」という集会もあった。日待ちとは夜明けを待つ、つまり陽が昇るのを待つという意味で、五行説の7月庚申(かのえさる)の日に行なわれていた。この日の晩は眠っている間に体の中に潜むサンチュウという虫が抜け出して、その人の貯まった悪事を天に報告してしまうため、眠らずに朝を迎えれば良いとした。各家でやると眠ってしまうかもしれないので、村人は一箇所に集まって飲み食いしながら朝まで語り明かす。子どもたちにとっては年に一度の楽しみな日でもあった。「早く寝なさい」と言われる日常とは裏腹に、「寝たらいかん」と言われ、子ども同士で朝までわいわいできるのだから。

 「結」は依然地方には続けられている所もあるが、「お日待ち」は名残の庚申塔(こうしんとう)や庚申祠が寺社境内や道端に見られるだけになっている。どちらも地域住民のコミュニケーションを形成する大切な慣習だった。

 お神輿の行列の先頭を歩く天狗は、その異様な出立から後世になって密教の烏天狗と融合して天狗と呼ばれるようになったが、実は「猿田彦命(さるたひこのみこと)」という神様だ。古事記や日本書紀(合わせて記紀と呼ぶ)などでは、猿田彦は伊勢の国津神(国土の地付き神)で、天の神が降臨する際に道案内をしたとされ、身長は2メートル超え、顔は赤く、鼻は長く髪は銀色か白色とされ、大きな輝く目は遠方まで照らしたという。記紀は神話と現実が混在し、国策も加えられて書かれているから、疑いつつ吟味して内容をそしゃくし、各人の推測も含めて解読されてきた。そこで猿田彦の容姿について一旦神話から離れて考えてみると、記紀の示す容姿は明らかに日本民族ではないと分かる。石器時代以前より日本はロシアやヨーロッパからも移民が入っていたから、地付きの猿田彦命は移民だったのではないかと推測される。ただし、あれほどに鼻が長いのは後々誇張されたに違いないが。

 さて、庚申の申(さる)と猿田彦の猿が混同し、また猿田彦が道案内役の神様であるから道標の象徴となり、村境に建てられた塞ノ神(さいのかみ)の石祠には猿田彦が彫刻されている場合も多い。村境の辻に建てられた塞ノ神では、正月飾りを焚くどんど焼きが行われて、隣村同士の自然な連携も生まれた。今では焚火が可能な休耕田や空き地、また寺社境内で行っている地域が多く、町田の中心市街地では小学校の校庭や当社で行うしかなくなっている。それでも、地域住民が集う機会としては素朴で自然な形だ。焚き上げを協力して行い、団子を焼いて食べながら語り合う様子は、「結」にも共通する。

 試行錯誤でイベントを立ち上げるよりも、もっと素朴な集まり方はないだろうか。様々な人々が肩肘張ることもなく、ゆったり顔をあわせられるような…。カリスマ的なリーダーが現れると警戒感を抱かれたり危険視される昨今、それでもあるレベルのリーダーは必要。今、日本には誰もが尊敬するリーダーがいない。それは市町村の単位でも例外ではない。何か良い方策はないか。導きの神様、猿田彦に尋ねてみようか。
 

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