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掲載号:2019年8月22日号

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写真左からアオスジアゲハの幼虫、成虫、クリスマスローズ、楠木の葉
写真左からアオスジアゲハの幼虫、成虫、クリスマスローズ、楠木の葉

ファイトプラズマ

 今年は梅雨が長く日照不足だったため、楠木の葉に細菌性のカビのようなものが発生。通常楠木は5月から6月にかけて落葉するが、今年は長梅雨のおかげで、この時期に緑の葉が大量に落葉。当社境内の楠木は幹の太さが2〜3mで高木だから殺菌剤の散布もできないが、日照が戻れば自然治癒するらしく、手だてのないままにひたすら掃除に励む日々。それにしても暑すぎる。

 アオスジアゲハが楠木の幹で休んでいた。神職の水色のはかまを「浅黄色」というが、マダラチョウ科のアサギマダラよりもアオスジアゲハのほうが鮮やかな浅黄色だと思う。アオスジアゲハは飛翔能力が高く、大木の楠の上まで機敏に飛んで産卵する。楠木は除虫成分を含む木で、生の切り株を玄関などに置いておけば天然の“虫コナーズ”になる。だから幹や葉は虫に嫌われるため、桜のように毛虫が湧くようなこともない。そんな葉を食草とするのがアオスジアゲハの幼虫で、その姿は楠木の明るい緑の葉に擬態している。今年は妙な病気で葉に褐色のシミが付き、しかもバラバラに落葉したから、アオスジアゲハには受難だったかもしれない。

 日照が戻って緑の葉の落葉も少なくなったが、反対に花を緑に、つまり葉化(ようか)するファイトプラズマというウイルスがいる。症状は葉化だけではなく、本来背丈が高いはずの植物の生育を鈍化させて低くしたり、稲などに感染すると枯らせてしまったり。症状に違いがあるのは、このウイルスがDNAを壊す性質があるためで、植物の種類で多様な変化が起きてくるというわけだ。農業従事者なら認識しているかもしれないが、例えば有名どころではクリスマスのころに活躍するポインセチア。本来は割と背の高い植物だが、海外でファイトプラズマに感染させてあの形になっている。つまり、背が低く葉が詰まって出るから飾るのに相応しい形状に落ち着いている。また、緑の花がマニアには人気があるようだが、花を葉化させるのはファイトプラズマの特徴で、西洋アジサイにはよく見られるし、最近私は緑のクリスマスローズを疑っている。

 現在、東大でファイトプラズマについて研究が進められているが、ポインセチアのような定番商品化の成功例もある一方で、稲に感染すると枯死してしまうという悪影響もある。研究途中で人体への影響についてもまだ不明。ただいつの間にか入ってきていて、我々の生活環境に普通にいるウイルス。長梅雨、高温多湿など気候変動が顕著な近年、得体のしれないウイルスが暴れないことを祈るのみ。

 とにかく、亜熱帯のような気候で熱中症死亡者も既に50人を超えた。皆さん、しっかり水分と塩分を摂って体力を落とすことなきよう頑張りましょう。プラズマを消して、ファイト!!
 

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