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町田天満宮 宮司 池田泉 宮司の徒然 其の64

掲載号:2020年9月3日号

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※クマゼミは高木を好み、撮影することができませんでしたので、猫に襲われたミンミンゼミを救って撮影
※クマゼミは高木を好み、撮影することができませんでしたので、猫に襲われたミンミンゼミを救って撮影

セミの熱中症

 終息の見えないコロナ禍、当社は社殿内の祈願(お祓い)は当面行わず、預かり祈願だけを受けることにした。つまり申し込んでいただき、翌朝神職だけで祈願を行い、その後お札(ふだ)や記念品を受け取りに来てもらうというやり方で、密を回避するためにはやむを得ない。しかしやはり「祓ってもらわないと・・・」という方も少なくないから辛い。

 神主(神職)が行う式の一般的イメージは、祓い串(大幣=おおぬさ)で最初に行う左右左と祓う仕草だろう。しかしこの祓いはあくまでも式に臨むための準備段階の一過程であって、式のメインではない。祓いの目的は式に入る前に神前に出向くのに相応しい心身になるための浄化だ。だから本来なら祓戸(はらえど)や祓殿(はらいでん)という別棟の建物または露天で祓いを受け、清浄な心身になってから神前へ進むのだが、おおむねほとんどの神社は便宜上神前脇に設けている。また、祓いに使われる大幣(おおぬさ)は紙で作られているが、本来は常緑で葉が厚い真榊が用いられた。ただし、九州などではオガタマノキ=写真右=も使われる。古代より真榊やオガタマは神事の舞いにも使われていた。九州にはオガタマの大木が多く、蕾や花がついた枝の様子はいかにもたくましさとみずみずしさがあり、巫女舞の鈴の起こりとも言われている。

 数年前、佐賀の嬉野にでかけ祐徳稲荷神社へ参拝した。宿の中庭にオガタマの大木があり、会話も聞き取れないほどたくさんのクマゼミが大合唱していた。数こそ少ないが、近年の温暖化のせいか東京でもクマゼミが鳴くようになった。長い梅雨の後半に部屋で飼っている鈴虫が鳴き始め、境内の楠ではクマゼミが鳴き、朝早くから室内と外でステレオ放送並みの大合唱。お陰で夏は目覚まし時計なしで早起きになっている。年々クマゼミの数が増えている。セミは数年間地中で過ごしてから、這い出してきて殻から抜けて成虫になるのだから、つまり数年前からクマゼミは地中にたくさんいたということだ。クマゼミは体も大きく声も大きい。一緒に鳴いているミンミンゼミ=同左=やアブラゼミの声がかき消されてしまうほどだ。ところが酷暑にはセミも調子を狂わされている。およそ全てのセミは35度を超えたあたりで鳴かなくなる。汗は見たことがないが熱中症になるらしい。同時にやぶ蚊も刺すのをやめて日陰に退避する。虫も暑すぎるのは苦手なようだ。だから昔から夕方になると鳴き始めるヒグラシは一番暑がりなのだろう。このまま温暖化が進めば、クマゼミはさらに北上していく。いや、北上ではなく全体としては生きやすいエリアへの移動なのかもしれない。いつかセミは北海道だけのものになり、その頃本州以南はどんな暑さになっているのやら。温暖化を止めなければ、日本の四季が壊れてしまう。ひとりひとりがやれることからこつこつ。次の世代、またその次の世代のために。人間が少しずつ忘れてきた次世代の種族を守ろうとする生き物の本能。動植物よりすっかり劣ってしまった本能を掘り起こして。

 ちなみに、比較する対象ではないが、コロナを終息させるより温暖化を止める方がはるかに難しい。

[お詫びと訂正]

其の62の文中、「十把一絡げ」を「一把一絡げ」としてしまいました。池田宮司ならびに読者の皆様にお詫びして訂正いたします。  (町田編集室)
 

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