「認知症の人も漢検を受けてみたらどうだろうか」。社会福祉法人嘉祥会(彌信道理事長/下小山田町)のサ高住「清住の杜」地域交流室を会場に15日、認知症の高齢者が「漢検10級」に挑戦した。同法人の彌晴美理事と、上小山田町で学習塾を開く沢内哲郎塾長の会話から生まれた認知症の高齢者による「漢検」受験。入居者たちの活力に―。そんな思いの詰まった挑戦が実現した。
この日、漢検を受験したのは同法人のグループホーム・ぬくもりの園に入居する5人。最高齢は1922(大正11)年生まれの96歳。いずれも認知症と診断されている。普段は共同生活の中で炊事や掃除、洗濯などの家事や折り紙やポプリ作り、体操や脳トレなどのアクティビティを行っている入居者たち。同ホーム管理者の沖西宏美副施設長は「忘れることも多いけど、色々なことを自分たちでやれています。先日ボッチャ(球を投げ的球にどれだけ近づけられるかを競うパラリンピック公式種目)をやった時は目がアスリートになっていました。今回もみんなで過去問を説き、勉強しました」と話す。
現在、認知症の人が働くことへの理解や動きが盛んになっている。働いて賃金を得るという目標を持つことの大切さ。「それは仕事だけでなく、勉強についても言えるのではないか」と施設長補佐の彌一勲さん。「戦争時代を経験し、学校に行けない人もいた。認知症というと物忘れなど衰えていくことばかりが目立つが、目標設定をすることでまだまだ高まる能力があるかもしれない」と期待を寄せた。
受験した漢検10級は小学1年生が習うレベル。漢字の書き取りや読みがな、筆順などを答える問題が並ぶ。開始後、懸命に答案を埋めていく入居者たち。途中、「誰かが先に書き込んでいるわ」と勘違いすることもあったが、無事に試験を終了。入居者の一人は「テストなんて久しぶりすぎて大変だったけど、まあまあできたかな。結果が楽しみよ」と感想を述べた。
彌施設長補佐は「時間を目いっぱい使い、筆順を確かめたり、最初間違えて書いていた文字も、思い出して書き直したり。新たな発見があり、びっくりしました。今後も多くの人に受けてもらいたいし、今日受けた人たちにも級を上げてチャレンジしてもらいたい」と漢検実施の手応えを感じていた。試験監督を務めた沢内塾長は「集中して座っていられるか心配していたが、みなさん真剣に取り組んでいて、そんな心配は不要でした」と話し「認知症の『症』を『賞』にしてあげたいですね」とねぎらった。結果は30日後に通達される。
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