創価大学(丹木町)の学生有志らにより運営されている「はちおうじ子ども食堂」が1月で立ち上げから1年を迎えた。「食を取り入れた居場所づくり」をめざしてスタートしたボランティア活動は、「訪れる子どもたちが積極的になった」(主催者)「子どもがのびのびできる場所」(保護者)など一定の成果をあげているようだ。
月1 親子へ手料理
「ご飯はあくまで手段。食べながら話をしたり、そのあとに遊んだり、コミュニケーションをとれる温かな場になれば」――。開けっ放しの扉の向こうから、味噌汁の香りが漂ってくる。大人とはしゃぐ子どもたちの笑い声も聞こえきた。1月9日、通算15回目となる「食堂」が開かれた。真冬の夜にもかかわらず誰かが「少し窓を開けようか」という。「食堂」のぬくもりは確かなもののようだ。
「はちおうじ子ども食堂」は基本的に月1回、市内の施設で開かれている。1食大人300円、子ども100円で毎回手作り料理を提供。運営費は参加費、寄附で賄っている。
市内をはじめ、遠方から訪れる人もおり、毎回10組程度の親子が参加する。家庭事情を直接尋ねることはないが、不登校や障がいを持った子どもたちもいる。
この日のメニューは紅くるみの炊き込みご飯、かぶと人参のそぼろ煮、味噌汁、落花生の塩茹で=下写真。昨年4月の回以来、川崎市から参加している小2の子を持つ父親は、「うちの子は同世代の子どもと遊ぶのが苦手。ここだと大学生がかまってくれる」と喜ぶ。「間口の広さ。大人が来てもいい点は嬉しい。自分も半分手伝いが目的。『自分がいてもいい場所』になっている」と話した。また、市内から訪れた小1の子を持つ母親は「子どもが大人や学生とふれあう機会は他にもあるがここは食事ができる。その点は助かる」と評価する。「(遊ぶ中で)大人はついつい注意をしてしまう。学生はそこまでしない。子どもにとってのびのびできる環境がいいのかも」
「ひとりぼっち」なくす
運営の中心となっているのは同大学の山口光司さん(経済学部3年)と大極(だいごく)正美さん(経営学部3年)。2人が所属する「社会問題の解決をめざす」サークル、また「居場所研究」についてなどを学ぶゼミの学生10人程度がこの活動に参加している。
サークルでは路上生活者についてをフィールドワークするなど貧困問題に強く関心を抱いていた。一方、大極さんの知人が豊島区で2012年から始まった、NPO法人による「要町あさやけ子ども食堂」の立ち上げに携わっており、それらの流れから「自分たちの住んでいる八王子で何かできないか」(山口さん)と思い立ったのが活動のきっかけ。14年7月から同志を募り、15年1月、「食堂」を発足。同年2月から「『はらぺこ』と『ひとりぼっち』のない街へ」をモットーに運営を開始した。
「食堂」には調理師、管理栄養士らがボランティアでサポートに加わる。提供する料理は地場野菜を使った手作りで、「やさしい味わい」を心掛けている。調理作業は調理師らから指示を受けたスタッフが行う。毎回50人分ほどを仕込んでおく。準備には約4時間を要する。
これまで肉じゃが、三色丼などを作ってきており、その中でも特にカレーは人気で、「他のメニューだと残す子がお替りをする」ほどとか。また、「遊んだりコミュニケーションをとれる場に」(大極さん)と掲げる通り、「食堂」は実際、発達障害の子どもがたっぷり動けるスペースになったり、ボランティアとボランティアの情報交換の機会にもなっているようだ。
本当に必要な子と
現在、子どもの6人に1人が貧困のもとで暮らしていると言われている。大極さんは「色々な人がこの問題に関心を示してもらえれば。見えない状態は怖い」、山口さんは「子どもの生活環境が大事。そこをサポートしていきたい」と話す。約1年間、活動を続け、「(触れ合う中で)子どもたちが自分たちから何かをやりたいと積極的になった」(山口さん)「子どもの表情がだんだんやわらかく、場の空気もやわらかくなった気がします」(大極さん)とそれぞれ「食堂」の成果をあげた。今後については「本当に食堂を必要としている子につながること。そのあと、その子をどうサポートしていくか。官民協働のモデルをつくりたい」(大極さん)と熱意は強い。
八王子市市民活動サポートセンターは彼らの取り組みを「学生の活動は継続が難しい。それをゼミで行っている点は大きい。色々な団体を巻き込んでうまくやっているよう」と評価した。
この活動についての問い合わせは代表の山口さん【携帯電話】090・9317・0108へ。
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