4月に起きた熊本地震において避難所のあり方がクローズアップされた。そんな中、市内で災害時の避難所運営について継続的に学んでいる団体がある。寺田大船地域自主防災連合会(伊藤泰義会長=寺田町在住)は「避難所運営ゲーム(HUG(ハグ))」を取り入れた防災訓練を3年前から実施。伊藤さんは「現場の大変さを実感できる。この訓練を続けていれば何かあったときいかされるはず」と話す。
難しさ痛感
寺田大船自防連は5年ほど前に設立した組織で寺田町、大船地区にある町会、自治会、管理組合など10の団体からなる。
2013年4月、同自防連は合同防災訓練で「避難所訓練」を実施した。その後市から「密度の高い訓練」とHUGの説明を受け、「1回やってみよう」と同年10月、同小学校で実施した。以後毎年各集りから20〜30人の役員が参加し訓練は続けられている。
HUGは避難所の状況を図面で再現し、その運営を疑似体験するもの。防災訓練ツールとして知られつつある。年齢、性別、国籍などが異なる様々な避難者の受け入れなどに対応していく。カード、図面、掲示板を利用し1グループ6人ほどで行われる。
「想像以上に考えなければならないことが多く衝撃的だった」。初めて1時間半ほどかけHUGを行った時の感想を伊藤さんはそう話す。参加者からは「少しパニック気味になった」という声も聞かれた。
緊張感生む想定
まずは「大量に押し寄せてくるだろう」避難者の受け入れ。勝手に自分で場所をとる人などがいては、避難所は無秩序に陥る。
また、避難者のあり方もひと通りではない。高齢者、外国人、妊婦、ペット連れなど様々な形がある。「ありとあらゆる人のことを考え」避難スペースを迅速に適切に配置していく。受付では「誰が」「何人」避難してきているのか把握する必要もある。「被害状況を知ることはとても大切。それをわからないと、助けも求めにくい」
そして避難者対応の他に、炊き出しの準備、物資の受け入れ、食糧の配置、ボランティアの受け付けなど様々な業務がある。HUGではそのような「イベント」を記載したカードが次から次へと読みあげられ、各グループで適宜の対応を考えていく。市生活安全部防災課では「想定が変われば判断も変わる。色々な場面においてどのような視点で考えればいいかを学ぶことができる。いい緊張感のあるゲーム」と話す。
「柔軟な発想必要」
HUGを継続的に実践し対応力が身についてきていると感じる一方、伊藤さんは課題もわかってきた。「経験が継承されない」。HUGに参加した役員の顔ぶれは、参加団体の事情で年ごとに変わることも。せっかくの体験を次にいかせない。「今までのものの見方が一変します。災害に対しても、日常的なことに対しても、もっと柔軟な発想が必要ということが痛感出来るのではと思います。是非一度経験して下さい」。同課では「このような取り組みが多くの地域に広がっていけば」と期待を寄せる。なお、HUGは市の防災指導員育成研修会で取り入れられている。
同自防連は4月23日、緑が丘小学校と合同で「学校の児童引渡訓練」と「地域の防災訓練」を実施。1000人以上が参加した。
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