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八王子 人物風土記

公開日:2019.11.21

12月5日にあるNPO企画の交流イベントに出演する
中屋 廣隆さん
西多摩郡桧原村在住 65歳

芸術家、最後の挑戦

 ○…市内唯一のボクシングジム、南町の中屋ボクシングジム創設者。3年ほど前、長男に会長職を譲り桧原村に居を移した。ただ、引退ではない。今も週に6日、トレーナーに専念し世界チャンピオンの輩出めざす。「最初の目標だし、出さずには死ねない。ジムの規模は関係ない。この町からだって世界王者が生まれる。夢があるよね」。四角いリングの中での逆転劇。洗練された動きの美しさ。果し合いの緊張感。「リングの中にはストーリーがある」

 ○…彫刻家を志し高知県四万十町から上京。日本大学芸術学部に進学した。在学中に見た試合で「嘘がつけない世界」と魅力を感じて飛び込んだ。半年でプロになり4戦した。「もっと本格的にやりたい」。そう思った矢先、学生結婚した妻が妊娠。選手を断念し、大学も中退して建築関係の職人となった。

 ○…30歳の頃、3人目の子どもが生まれた。「芸術家になりたかったのに安定している」ことがたまらなく感じて彫刻活動を再開した。同時にトレーナーとしてボクシングに復帰。デビューから育てた選手は世界戦に2度挑むなど成果を出した。「バブルだったし、両方から引っ張りだこだった」。40歳の時、篤志家がジムを持たせてくれた。ボクシングに専念し5年で東洋太平洋王者を、その半年後には日本王者を輩出。合計10人のチャンピオンが育った。

○…自宅は、彫刻家として再スタートを切るためのアトリエとして準備を進めている。「その辺の石でも磨けばどうなるかわからない。彫刻の名作も最初はただの石」。ボクシングもそう。磨いた石(選手)が世界チャンピオンになる可能性を秘めていると語る。「70歳までには世界王者を」。「芸術家」として最後の挑戦が始まった。

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