リチウムイオン電池を開発した旭化成名誉フェロー吉野彰氏(藤沢市在住・71)がこのほど、「ノーベル化学賞」を受賞した。本紙では、開発秘話について話を聞いた。
――ノーベル化学賞の受賞決定、おめでとうございます。改めて今の心境を聞かせてください。
「受賞当日と翌日は興奮状態であまり実感がなかったのですが、(2日経って)ようやく湧いてきたように思います」
――長年情熱を傾けてきたリチウムイオン電池は形になりました。研究者としての今後は。
「もちろん研究は続けていくつもりです。研究者・技術者は生のデータに接していないとすぐに”錆びる”。自分の手で実験するような直接的な研究活動ではありませんが、色々な研究者との交流や相談ごと、あるいは大学や技術研究所などでの活動を通じて今後も研究に携わっていきたいと考えています」
――川崎技術研究所の在職時代、リチウムイオン電池の開発につながったエピソードはありますか。
「1982年の大晦日の午後、時間ができて論文を読もうと資料を取り寄せたところ、その中にリチウムイオン電池の正極材料に関する文献がありました。それが当時研究していた負極材料と非常に相性が良さそうだと予想できた。空白の時間にできた出会いというか、それが現在の電池の組み合わせが決まった瞬間だったと思います」
――リチウムイオン電池は地球温暖化への切り札として注目を集めています。開発者として期待は。
「電気自動車に関しては、電池を開発した当初から(商品化の)話があがっていましたが、電池の性能が折り合わず、実現は不可能という見方がほとんどでした。しかし、モバイル機器を中心としたIT分野でこの20数年の間に市場実績ができたことで、かつて夢物語と言われた電気自動車も消費者の手の届く段階まで来ました。リチウムイオン電池は電気自動車をはじめ、環境問題に対しても大きな変革をもたらす可能性がある。期待しているところです」
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