綾瀬と海老名の市境に「喫茶めだかの楽校」がある。店は綾西バザール商店街にあり1杯330円のコーヒーや440円のクリームソーダ、550円のエビピラフのほか、チキンドリアやパンケーキも揃える地域の喫茶店として親しまれている。この店は店主の石橋正道さん(53)が商店街の空き店舗を活用して昨年7月にオープンした。
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石橋さんは昨年3月まで綾瀬市社会福祉協議会に勤め、31年間の在職中に取得した社会福祉士とケアマネージャー、ファイナンシャルプランナーの資格を生かしこの店の母体となる一般社団法人を開設。介護の仕事を基盤として「夢のひとつだった」この店を開業した。「めだか」の強い生命力に魅かれ、店内では大小14個の水槽で「めだか」を飼育している。
昨年7月のオープン当初は日曜日と祝日を除く毎日、午前10時から午後4時までの営業だったが、夏場の猛暑とコロナの影響で1日の売上が330円だった日もあり現在は火・木・土の週3日に営業日を減らした。介護の仕事は順調だが、店の経営は日に日に厳しさを増している。
1月8日に再発出された緊急事態宣言は、感染拡大防止の標的に飲食店を定めた。飲食店には午後8時までの時短営業を要請し、不要不急の外出自粛も求めている。
時短要請に応じた飲食店には1日6万円、月最大180万円の協力金が支払われるが、石橋さんの店は午後4時までの営業のため協力金の対象から漏れている。
石橋さんは「昨年7月の開業なので、事業者に幅広く支給される持続化給付金の対象からも外れている。ドン底からの開業だと思って始めたが、ドン底の底にはまだ底があった」と嘆く。さらに「持続化給付金や協力金がもらえたら店を閉めることも考えるかもしれないが、巣ごもりの気分転換で店に来たいと思う人もいるかもしれないので店はできるだけ開け続けたい」と話す。
2人の子育てを終えた石橋さんは昨年3月31日付で社協を退職し、翌4月1日から「一般社団法人インクルD」の代表理事に就いた。旧知のケアマネージャー4人と居宅介護支援事業所「ケアステーション紅組」を立ち上げ、同時に地域の拠り所としてこの喫茶店を開業する計画を実行した。
「喫茶店は昔からの夢だった。店を開けるだけで赤字だが介護事業があるから何とか踏ん張れている。お酒も出さず、夜間営業もせず、感染症対策を万全にして地域の拠り所になっている。そういう店は他にもあると思う。こうした店にも陽があたるような、きめ細かにゆき届く支援があるといい」と、胸の内を語ってくれた。
店は県が奨励する「LINEコロナお知らせシステム」に登録し、メニューと「マスク会食」を促す県の啓発チラシを一緒に卓上に置いている。入り口には手指消毒があり、テーブルは透明のアクリル板で仕切られ、壁にはあまたの感染症対策のチラシとともに地域の情報が掲示されている。それでも協力金や持続化給付金といった公的支援はは1円も支給されない。
店がある綾西バザール商店街では、毎月第3日曜日に「バザール大市」と呼ばれるイベントが開催される。このイベントは商店街の核店舗にとっては大切なかき入れ時だが、2度目の緊急事態宣言を受け1月は中止が決まった。
そんななかでも石橋さんは歩みを止めない。今年4月には新たに早川地区の空き家を活用してヘルパーステーションの活動拠点を開き、この古民家を地域に開放して「交流館」とする構想もある。
石橋さんは「そこに集う人たちと新たなコミュニティをつくり地域に根付かせたい。これからもワクワクすることにたくさん取り組み、地域を元気にしていけたら」と、前を向く。
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