23の国と地域から力作が集まった「世界らん展」で、(有)座間洋らんセンター(座間市栗原)の加藤春幸さん(35)が手掛けた「スピリット オブ ザマ」が、「世界一」と呼べる日本大賞を受賞した。「地元・座間の名前を冠した花を世界に発信したい」と、2004年から毎年出品して17年目。諦めずに挑戦し続けた日々が、ついに大輪の華を咲かせた。
「スピリット オブ ザマ」が受賞
世界らん展は、読売新聞社やNHKで構成される実行委員会が主催。出展総数およそ3000種・10万株、審査申請総数が1232点と、世界最大の「蘭の祭典」だ。今年で25回を数え、今月13日から22日(日)まで、東京ドームで開かれている。13日、アメリカ蘭協会のフランク・スミス会長らによる審査が行われ、「日本大賞」などが選ばれた。
1722輪の大作
「スピリット オブ ザマ」と名付けられた蘭は、主にパプアニューギニア原産のデンドロビューム属のスミリエ。珍しい品種で、加藤さんも3年前の同展で出会うまで、写真でしか見たことがなかったという。特徴の1つが、その色。「リップ」と言われる花弁の中心部はダークグリーンで、周囲の花びらはクリーム色。そこに、ピンク色のつぼみが合わさり、多彩な色彩を生み出している。18本の茎に1722輪の花が咲いており、スミス会長からは「株の大きさ、花の数と質、どれも大賞に相応しく素晴らしい」と称えられた。
特に高く評価されたのが、上部から下部までの花が咲き揃っている点。熱帯気候の土地で生まれたスミリエは通常夏に咲き、冬に開花させるのは困難が伴う。加藤さんは数カ月前から「2月13日」の審査日を目指して、「秘密」という独自の開花調整を続けた。スミス会長の「本日の審査に、最高の状態で出品されたことは出品者の情熱と努力を感じます」という選評に、「理解してくれて嬉しい」と顔をほころばせる。
激励の言葉で逆風乗り越え
父・春朗(しゅんろう)さんが創業した、(有)座間洋らんセンターで働き始めたのは大学卒業後。生産販売に加え、品種を改良・開発する「育種」にも長年取り組んできた。同展に初挑戦したのは、2004年。父との共作を17点出すも「全滅」。翌年は初入賞を果たし、それ以降も毎年出品してきたが、大賞には届かなかった。
2011年には強い逆風に見舞われた。落雷で温室が焼け、花や設備など数千万円の損失に。予期せぬ被害に「センターを辞めるべきか」――。そんな選択肢が頭をよぎったという。しかし、市民や同業者から、数多くの激励が届いた。そして、テレビドラマで耳にした「神は乗り越えられる試練しか与えない」というセリフ。これらが、再起を誓う後押しとなった。
「スピリット オブ ザマ」という名には、「座間を世界に発信したい」という想いと、17 年にわたり挑戦し続けてきた「諦めない」という魂(=スピリット)が込められている。
頭に浮かんだ「ありがとう」
事務局から受賞の一報を受けたのは、13日の午前11時52分。会場の東京ドームに急行し、授賞式に出席すると、間もなく報道各社の取材に追われた。テレビやインターネットを通じて拡散された「快挙」は、知人や関係者に知れ渡った。加藤さんの元にはお祝いの電話やメールが相次ぎ、2日間の着信は約60件にも及んだという。
受賞の瞬間については「『やった』とか『嬉しい』という感情ではなくて、支えてくれた人たちへの『ありがとう』という言葉が一番に浮かびました」と振り返った。大きな夢を成し遂げ、「賞をもらうことが目的ではありません。蘭の数だけ、人の笑顔があります。これからも、より多くの人に幸せを届けていきたいです」と満面の笑顔で話した。
受賞作は、22日まで東京ドームで展示中(入場料金あり)。同センターでは、23日から見ごろが終わるまで、センター内に展示する予定。問い合わせは同センター(市内栗原947)【電話】046・251・3428。
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