ハーモニーホール座間9年ぶりの新作オペラ「目覚めの時」でソリストを射止めた 辰巳 啓子さん 入谷在住 31歳
肉声で感動伝え続けたい
○…声楽を始めて10年余り。声楽家はいわゆる「ボーカル」のようにマイクを持つのではなく、まるで楽器のように体中に音を響き渡らせ、音を遠い客席まで運ぶ。発せられた独特の響きや細かなヴィブラートは、会場によって届き方が大幅に変わってしまうほど繊細だ。場所に合わせて少しずつ歌い方を変えながら、二度と流れることのない、その時その場所だけの最高の時間を観客と共有する。
○…かつては座間高校創作舞踊部で全国の舞台にも立った。音大のピアノ科に進むも、19歳で歌の楽しさに目覚めて大学院からは声楽の道へ。昨年、仲間が出演すると聞いてハーモニーホール座間企画のオペラ「カヴァレリア・ルスティカーナ」と「道化師」を観劇し、強く惹きこまれるのを感じた。「やってみたい。でも、できるかな……」。オペラの経験はなかったが、思い切ってオーディションを受けた。強い手ごたえがなく落ち込んでいる所に一本の電話が。新作「目覚めの時」封切り公演の、ソリスト「森の精霊・シーレ役」決定を告げるものだった。
○…数ある歌の中でも、少ない単語の中にも情景があり、いつまでも心に残る童謡が特に好きで、海老名市内で新米ママたちに「赤ちゃんを育てるための歌」を教える講師をしている。わらべ歌、童謡、手遊びと、ただ歌うだけでなく、いかにきれいな発音で正しい日本語を歌えるかを重視する。今回出演するのは、珍しい全編日本語のオペラ。童話・眠り姫がモチーフで、これまで歩んできた道のりとのゆかりを感じている。
○…本番まであと4カ月ほど。作品の全体像が明らかになり、練習も間もなく本格的に始まる。「新作というのは、その役がいったいどんな人物なのか、一から考える必要がある。プレッシャーもあるけれど、とてもワクワクしています」。かつて経験のない、1300人収容の大舞台。その最後列まで感動を届けるべく、日々練習に打ち込む。
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