▽市内飯山で68年間、手作業で黙々と座敷箒を作り続ける職人がいる。9月8日に90歳を迎える村井徳夫さんだ。自宅にある広さ4畳半ほどの作業場で作るのは、シュロというヤシ科の植物の皮から作られるシュロ箒やホウキグサで作る草箒。今でも多いときはひと月200本ほど生産する、「厚木では一人だけになった」現役の職人だ。
▽村井さんは、手作りの箒の魅力を「畳や板の間などの床を傷つけない優しい掃き心地」だと話す。手間のかかる長柄の箒は、1本作るのに1時間以上。今は、都内の日用品雑貨の老舗卸問屋に卸す他、村井さんの自宅で販売している。10年ほど取り引きする同問屋店長は「安定した高い技術で数を作れる、全国でも僅かしかいないプロ中のプロの職人」と信頼を寄せる。
▽生まれも育ちも厚木市飯山。終戦間もない22歳のとき、親戚の家で「お前にもできるぞ」と言われ、箒職人の道に入った。当時は、飯山だけでも約30軒の職人がいたほど盛んだった箒産業も、掃除機の発達、職人や箒を売る行商人の高齢化などの影響で職人は村井さん一人となり、後継者もいないという。村井さんの一日は、午前中にナスやキュウリなどを育てる家庭菜園を世話した後、作業所に籠り箒作りを夕方6時過ぎまで。仕事を終えた後の晩酌が毎日の楽しみだという。
▽「辞めたらボケると思っている」と体の為にも生涯現役にこだわる。60歳の時に心筋梗塞で倒れたが、現在は健康だ。卒寿とは思えないほど背筋はピンと伸び、自動車も運転する。これからの夢について尋ねると「今は体が一番だけど、命がある限り10年でも15年でも続けたい。仕事ができるのが一番の幸せだね」と、手際良く箒をこしらえながらハキハキとした口調で答えた。卒寿のお祝いは「もっと長生きするから好きじゃない」とか。娘夫婦とその息子との4人暮らし。
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