綾瀬ブランド新商品開発支援事業として活動している「あやせものづくり研究会」が、2年半の開発期間を経て初の製品化に成功した。今回発表されたのは(株)ナウ産業の「テツナベ」と、旭工業(有)の「スミナベ」の2種。これまで企業向けの工業製品製造を行っていた2社が、その技術力を駆使した消費者向けの4商品を10月23日に発売した。
綾瀬市は政令指定都市に続く県内第4位の企業集積数を誇るが、中小零細企業が多く大部分が下請け企業となっている。この状況を脱却し、自社ブランド力向上によるメーカー化を目指すため、綾瀬ブランド新商品開発支援事業が立ち上がった。
2015年から始まり、翌16年に商工会と連携。商品開発のノウハウを持つ東京の企業「アッシュコンセプト」にデザインプロデュースを委託し、意欲的な企業を募って研究会が創設された。
テツナベ
テツナベを開発したのは、深谷上のナウ産業。自動車部品のプレスと溶接を行う同社の技術で、厚さ3・2mmの本格的な鉄板を素材にした家庭コンロ用の鍋を製作した。
もともと独自に開発を進め、「あやせ匠極厚グルメ鉄板」としてふるさと納税返礼品への協力や自社販売を行っていた同社。テツナベはこれをブラッシュアップしたもので取っ手を持ちやすくし、加工を施して「鉄なのに錆びにくい鍋」に生まれ変わった。
窒化処理という工業製品に施す特殊な加工で表面が鉄の7倍の強度になるため金たわしでもはげず、自然乾燥可能で手入れは簡単。熱伝導性と蓄熱性に優れ、通常の鉄鍋のように鉄分をとることもできるという。
「箱や説明書といった付属品の作り込みなど、勉強するところがたくさんあった。この経験を活かし、今後も開発を続けたい」と同社社長で研究会の会長を務める今寿義さんは話した。
スミナベ
旭工業は、カーボン(炭素)を扱う会社。純度と耐熱性の高さから繊細な工業製品を扱う会社に製品を納めるため、あまり一般消費者が目にすることはない素材となる。
商品開発は、「いま流行りの一人焼肉のプレートを作れないか」という同社の嶋知之専務の発想から始まった。試行錯誤を繰り返し、ナウ産業同様ふるさと納税返礼品への協力や自社販売を行っていた。
今回これを改良し、鍋と大小2種のプレートを開発。加熱すると炭火焼きのような遠赤外線を発するため素材をジューシーに焼くことができ、コンロでの火力調整が容易な「失敗知らずの万能調理鍋とプレート」として打ち出した。
遠赤外線効果に関しては、焼いた後の食材の水分減少率が低いということが大学の研究室の調べでわかっているという。また、軽くて扱いやすく、フッ素コートを施すことで油を使わなくても焦げ付かないヘルシーな調理が可能になった。
「箱・説明書・バーコード、その一つ一つも大変だったけど、何より販売ルートの確保。それを持っているアッシュコンセプトとの共同開発は、学ぶことが多かった」と嶋さんは語った。
高い技術力と自由度に期待
同じく研究会所属の(株)鎌田理化学器械製作所は、「石英ガラス」という純度と耐熱性が高い特殊なガラスを扱う。主に光ファイバー製造機械の部品や研究室で使われるため、カーボン同様一般消費者が手にする機会はほぼないそうだ。
4月からの加入でまだ製品化には至っていないが、1〜2カ月に1回行われるアッシュコンセプトとの打ち合わせには積極的に参加。現在はキッチン回りの製品の開発を検討している。
市工業振興企業誘致課によると、ハンドクラフトで様々な製品を作れる鎌田理化学は技術力と自由度が高く、今後の展開に期待が持てるという。同社課長で研究会副会長を務める佐野敬介さんは、「自社の技術を活かした商品を開発したい」と意欲を見せた。
今回発売となった商品は、アッシュコンセプト公式ショップ(https://koncent.jp/)で購入可能。テツナベは1万2千円(税別)で、スミナベは1万3千円から6万円(税別)。今後は各社での直販も視野に入れていく。
問合せは市工業振興企業誘致課【電話】0467・70・5661へ。
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