半原宮大工矢内匠家を研究して20年になる 鈴木 光雄さん 愛川町半原在住 73歳
超一流大工に興味津々
○…江戸城の普請や県内外の神社仏閣の建造など今に残る数々の貴重な功績がある半原宮大工「矢内匠家」。その5世代200年にわたる匠歴譜の本格的な調査を開始して早20年が過ぎた。平成21年6月には書献や所蔵物、建造物などを調査・研究した内容をA4版257ページに及ぶ「半原宮大工矢内匠家匠歴譜」として自費出版。郷土資料館などに寄贈した。「矢内匠家が手がけたものを知ってもらえればと思ってね」とにこやか。
○…研究を始めたきっかけは「宮大工という特殊な技術が要求される仕事の中で”超一流”と呼ばれた大工のことをもっと知りたい」という思い。半原で工務店を経営する自身も矢内匠家14代曾孫弟子。15歳で大工の道に入り、今も現役で現場を駆け回る。設計・積算・施工・装飾その全てに精通した矢内匠家を知れば知るほど、もっと知りたいという思いが膨らんだという。仕事が休みの日には関東一円に広がる匠家の歴譜を取材。気づけば深夜という日々が続いた。
○…取材活動に妥協はなく、自費出版に際し、出会った人は2,000人を超す。図面や文献など資料だけを鵜呑みにせず、必ず当時の様子を知る人に話しを聞いた。しかし「自分の思い込みではいけないし、安心して読んでほしいと思っただけ」とその苦労をも笑い飛ばす。
○…「矢内匠家の調査が趣味」と言ってはばからない。何を聞いても、気づけば矢内匠家の話しになっていて、年号から建物の様子まで今見てきたかのようによどみなく話す。身振り手振りも声も大きく匠家への”愛”を表現。「それしか話してくれないって書いといて」と笑うが、今後の目標と夢を聞くとこんな答えが。「大工の教科書みたいな本を書きたい。そしていつか自分・子・孫の3代で仕事ができたらいいな」。