清川村・青龍祭の主役である龍の制作指導を行っている 石川 政男さん 清川村煤ケ谷在住 87歳
愛あふれる頑固者
○…頭から尾までの長さは約20メートル。頭と胴体の骨組みは竹、回りを覆うのは茅とわら。祭りの主役である雌雄の龍はそのルックスに最大のこだわりがある。尾にかけて少しずつ細くすることで「らしさ」が増す。大きく開いた口はアゴが平行でなければならない…。今年で28回目だが、これまで同じものは1つとしてないといい「何年たっても、試行錯誤の繰り返しだよ」とにこやか。
〇…竹の切り出しから、茅の刈り取り、胴体を編む作業と、龍の制作にはのべ500人以上の手が入る。祭り運営に関わるスタッフを加えればこの何倍にもなる。みんなが主体的に関わる手づくりの祭りであることが誇りだ。回を重ね、「昔一緒に龍作りに汗を流した子どもたちが大人となって協力してくれる」「毎年龍見たさに遠方から足を運ぶ人もいる」。地元愛あふれる横顔は、すこぶる優しい。
〇…子どもの頃から物を考えるのが好きだった。「どんなものがあったら便利になるかなと考えては胸を膨らませた」と振り返る。当時の夢は設計士で、板を細工して畑の種まきを楽にする道具を作ったこともある。戦争があり、望む道に進むことはかなわなかったが、向学心は絶えなかった。農家としての仕事をしながら農畜産業に関わる資格取得に向け勉強を重ねた。その後、JAの営農指導員となってからは、村の気候風土にあった農産物の研究に取り組み、トマト、キュウリ、お茶の開発に携わった。
〇…毎年「今年の龍が一番」と言えるのは、設計図がないからだ。「紙に書いたらそれ以上のものはできない」。頑固っぷりは芸術家のようだが、現場でいい知恵があれば即採用でやってきた。保存会は高齢化が進み、後継者育成は課題の1つ。それでも作業手順を記録しようとする役場の職員には「待った」をかけ、作業中の子どもたちには容赦なく檄を飛ばし、全力で褒める。その心は、まだ見ぬ龍への期待である。