愛川町田代の大矢孝酒造(株)の純米酒「残草蓬莱」が南部杜氏協会の鑑評会で純米酒の部2位(次席)を獲得した。同銘柄は精米歩合の違う純米吟醸酒の部でも優等酒に入選。神奈川県の酒蔵として唯一の受賞を果たした。
全国規模の杜氏組織である同協会が主催する「南部杜氏自醸清酒鑑評会」は、酒造技術の研鑽と資質の向上を目的に毎年行われているもの。1911年から続く鑑評会で、今年で97回目と長い伝統を誇る。
今回は全国150の蔵から出品があり、吟醸酒340点から15点、純米吟醸酒225点から5点、純米酒162点から3点が上位入賞に選ばれた。
審査は4月5日から8日にかけて、岩手県花巻市の南部杜氏会館で行われた。仙台国税局鑑定官室の鑑定官や、岩手県工業技術センターの醸造技術部長、日本醸造協会の代表理事会長など27人が香りや味を評価する。第1審から第3審を経て決審が行われ、部門別に「上位入賞」と「優等酒」が選ばれた。
今年の上位入賞酒蔵を都道府県別に見ると、東北勢の入賞が目立つ。神奈川県の酒蔵で上位入賞に選ばれたのは3部門を通しても大矢孝酒造のみだった。
同蔵の「残草蓬莱」は、食事の風味を楽しみながら飲める酒として、あえて香りを抑えた仕上がりになっている。香りの高い酒が評価されやすい鑑評会にあって、残草蓬莱の入賞は確かな味の評価ともいえる。
昨年はさらに、酒の要である米を「秋田酒こまち」に変更した。
秋田こまちは全国的に有名な米だが、「酒こまち」はあまり県外には出荷されない知る人ぞ知る銘柄。この米で作られた酒は、なめらかなテイストに特色がある。香りに突出しない、洗練された旨さを求める残草蓬莱には最適な品種だ。しかし、米が変われば製法も変わる。「水の吸わせ方は分単位、秒単位でも味が変化します。さらに発酵の具合など、全てを微調整して臨みました」と8代目蔵元の大矢俊介さんは語る。
失敗の許されない一発勝負の酒造り。180年を超える老舗が受け継いできた技と、大矢さんが記録してきたデータの数値をもとに、新たな「残草蓬莱」が誕生した。「伝統を受け継ぎつつ、新たな挑戦も続けながら、良い酒を造り続けていきたい」と大矢さんは笑顔を見せる。
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