右半身のリハビリをしながら左手で「色えんぴつ画」を描き続ける 須藤 新一さん 金谷在住 61歳
「右がダメなら左があるサ!」
○…はがき大のキャンバスに、色鉛筆の柔らかな色合いと繊細な描写―。これを描いているのは、利き手ではない左手だ。
○…8年前の5月、脳出血で倒れた。手術で一命は取り留めたが、右半身に麻痺が残った。「現実を受け入れるしかないと思った」。しかし「歩けない、しゃべれないのは嫌だから、リハビリをするのは当然のこと」と強い心が芽生えていた。病院の消灯時間を延ばしてもらい、リハビリに専念した。目標は1日1万歩。周囲も驚く意欲の源は、「自分ひとりで歩きたい」―ただその思いだけ。退院後も、自宅のある金谷から北久里浜まで、週1回の通所リハビリへは4Kmの道のりを歩いて往復。その成果もあり、介護1から支援1へ状態も改善。「歩ける環境にあることが何よりも嬉しい」。
○…幼い頃から絵が好きだったことが高じて、デザイン会社に就職し、独立。ポスターやチラシのデザインに携わっていた。リハビリ中も自分の中につのる「絵が描きたい」という気持ち。右手はリハビリ、そして「左しかないんだから、やってみよう」。入院中、手に取ったのが色鉛筆だった。いつしか繊細に描けるようになっていた。退院後、毎日通っている池上市民プラザでいつものように絵を描いていたところ、顔見知りに「100枚描いてほしい」と頼まれた。目標と生きがいがもう一つ増えた。これを機に先月、横須賀学院の同窓生らと個展を行う機会も得た。用意した絵は完売。「次も期待に応えたい、もっと上手くなりたい」。新たな目標に向けて、制作に時間を割く日々だ。
○…「右がダメなら左があるサ!」―池上の妙蔵寺に依頼された講話で、そう語ったという。「今までとは生きるスピードが違うけど、左手の世界も面白いと思えるようになった」といたってポジティブ。「支えてくれた家族や友人への感謝の気持ちを、自分の生きる姿で伝えたい」。そう語ると、再び色鉛筆を手に取った。
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