今年8月、富士フイルム営業写真コンテストに入賞した写真家 斎藤記子(のりこ)さん 東逸見町在住 51歳
笑顔が明日への原動力
○…抱きついて甘える子どもを愛おしそうに見つめ返す母親―この瞬間は二度と戻らない。何気ない1コマでもその人にとっては生きた証で、それを写し出すのがプロの仕事だと自負する。撮影スタイルは実に自由。”走っても騒いでも飛び跳ねても良い”じっとしていては人の自然な表情は濁ると信念は固い。「単純に人の笑顔が好きなんです」
○…写真家の門を叩いたのは18歳。経済的に自立するため、手に職をつけたかった。独立するまで毎日、師匠の技を目で盗み、ひたすら修行をした。他の写真家との違いは、自由な構図。幼い頃から絵画が得意だったことで、ファインダーから見える世界を真っ白なキャンバスに見立てシャッターを切る。一見、無意味そうな空間も、そこに人の感情が込められていれば大事な間なのだ。絵も写真も芸術の1つ。「アートフォトスタジオ」と店名を掲げる理由はそこにあった。
○…待望の第一子は自閉症児だった。「どう育てたものか?」自問自答の日々が続く。最悪の状態も頭を過ったが、困難な状況でも必死に生き抜こうとしている姿を見てハッとした。「ならば自分も一緒に成長しながら生きればいいのだ」。忙しいスタジオ経営との両立に思い悩む日もあった。その度に「あなただからここまで育てられたのだ」と周りに支えられ、息子は今年16歳になった。暗闇に差した一筋の光は、やがて我が子と歩む足元を照らす確かな道標に変わっていた。
○…長年の疲労から体調が優れず、仕事を辞めようと思っていた今年8月、写真コンテスト入賞の一報が入った。「大好きな写真、続けたら?」と背中を押された気分に、少し楽になった。今は七五三の撮影に大忙しの毎日。なぜそこまで頑張れるのか尋ねると「息子が1分1秒でも笑ってくれるなら、それだけで私は一生頑張れる」と目尻を下げ、「そりゃ愛してるからね」と笑う。どんな状況下でもやはり母は強かった。
|
|
|
|
|
|