東浦賀のギャラリー時舟で今月21日から個展を開催する造形作家 片岡昌(あきら)さん 秋谷在住 80歳
衰えぬ創作欲で生涯現役
○…造形作家人生の中で大事なのは社会風刺と大胆な遊び心。数年前、渋谷のど真ん中を行き交う若者に興味を持ち、戯画的に表現した。作品の基軸は「一辺倒の見方をしない。多面的、特に裏側に目を向けること」と語り、傘寿の齢を迎えても観察眼を研ぎ澄ますことを怠らない。誰にも師事せず、流派にも属さない自由奔放さから生まれた作品は「超次元アート」と呼ばれ、見た者を虜にする。
○…学生時代は美術部に所属し、暇さえあればデッサンに明け暮れるような少年だった。経済的な理由で高校を中退し、1950年18歳で「人形劇団ひとみ座」に入団。人形美術担当に就いた。生活のために始めた仕事だったが現実は甘くなかった。人形作家と言えば聞こえはいいが、1日1個コッペパンが食べられる程度と困窮。しかし、自分が苦心して魂を吹き込んだ人形を人が喜んでくれる姿にやりがいを見い出し、途中で投げ出すことはなかった。
○…数ある代表作の1つに「ひょっこりひょうたん島」がある。今でこそ日本人形劇の傑作と名高いが「当時は人形が可愛くない、グロテスクだと視聴者投稿があるほどウケが悪かった」と冗談交じりに振り返る。それでも作品を先入観なく見てほしいとキャラクターの人間性だけ反映し、喜怒哀楽の表情はあえて無視するポリシーを貫いた。これまで送り出した人形はゆうに2千体を越す。
○…個展では主に木が素材の造形作品を展示するが、独学で身につけた加工技術と平面・立体が融合した革新的な手法が特徴だ。そして更なる面白さはモチーフの幅。人や動物、自然、神…あらゆるものを形にしてきたが「今は蛾です」驚きの題材も至極真面目な様子。偶然目にした虫までも作家魂に火をつけるらしい。横須賀にインスピレーションを受けた作品はまだないが「今度作ってみるのもいいかも」と一言。穏やかな口調とは裏腹に貪欲な探究心の炎は生涯燃え続ける。
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