猿島活用にあの手この手 夜間イベントや読書会など
猿島の新たな活用方法が模索されている。夏場の海水浴やバーベキュー客で賑わう猿島だが、冬場や平日の来島者数は1日に数十人と極端に少なく、閑散期の集客に苦戦している。そこで猿島への定期船を運航する(株)トライアングルは島の新たな魅力を発掘し、市外からの客足に結び付けたいとイベントを考案。参加者の反応も上々で手応えを感じている。 猿島の年間来島者数は約12万人。そのうち8万人が7月〜8月に集中し、夏場のレジャースポットとして人気を集めている。しかし、夏休みが終わって9月に入ると客足は激減する。閑散期の主な来島者は釣り人と島内散策をする観光客に限られ、冷たい海風が吹く冬場は特に少なく1日10人に届かない日もあるという。客足の平準化が長年の課題だった。
「年間を通して猿島を楽しんでもらう方法は何かないか」と検討を重ね、始まったのが星空観察会や撮影会などこれまでになかった付加価値をつけたプロモーションイベントだった。
市外から誘客
今月23日には、夜間時活用の一環として「無人島星空撮影会」が行われた。同イベントはこれまで猿島を知らなかった市外のファンを増やすきっかけにしたいと、不特定多数の目に触れるようフェイスブック上のみで告知をした。当初の狙いどおり参加者44人のうちのほとんどが横浜、東京などから訪れたという。
イベント開催の目的はファン獲得だけでなく、猿島の新たな魅力創出も担っている。「夏の海」「歴史散策」以外の楽しみ方を発信するため多角的に探っており、今回の夜間利用もその一環だ。通常は午後5時以降の立ち入りができない島内で、プロの講師から写真撮影のテクニックを学びながら探検フォトを楽しむ特別企画を準備。普段見ることができない夕景や夜景を写真に収められるという希少性もカメラ愛好家たちに響き、募集開始数日で定員に達した。当日は厚い雲に覆われ満天の星空を見ることはできなかったが、参加者は、雲間から顔を出す月、闇夜に佇む要塞跡やレンガトンネルを幻想的に撮影しようと思い思いの構図でシャッターを切っていた。
「趣味のカメラを楽しみたい」と埼玉県から初めて猿島に来たという男性は「海も自然も雄大なロケーションが素晴らしく、撮っていて楽しかった。今度は昼間に来て撮影してみたい」と語った。イベント終了後、満足そうな参加者の様子に同社広報担当の藤野浩章さんは「手応えは掴めた。今後もニーズに応じて夜間利用できるイベントを打ち出したい」と定期開催に意欲を見せ、「親子で楽しむ夜の要塞探検ツアーなど参加者の年齢の幅も広げられたら」と話している。
文化財指定へ
一方、猿島を管理する市環境政策部緑地管理課も民間業者の積極的な集客姿勢を歓迎。現在、横須賀市でも猿島公園専門ガイド協会と連携し、豊かな自然が残る島環境に親しんでもらうためのエコツアー事業を行い、保全と活用を図っている。同課によると猿島は、平成26年度中に市の文化財指定を受ける見通しということもあり、官民一体となって観光客誘致に活用していきたい構えだ。
「島時間」で女性客を惹きつけろ
集客で一番不得意としているのは20代から40代の女性客。自然と歴史遺構が見どころの猿島にいかに足を向けてもらうかが今後の課題で、テコ入れにも乗り出している。
そこでテーマに据えたキーワードは「島時間」だ。東京湾唯一の無人島という地理を活かし、都会の喧騒からしばらく離れられる癒し空間の提供を考えている。
例えば、解放感いっぱいの砂浜で波音に耳を傾けながら行うヨガ教室や、コーヒーを飲みながら自分だけの世界に浸って楽しむ読書会など、観光という枠にとらわれず、「空いた時間に気軽に立ち寄れるリラックススポットとして提案したい」としている。
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