JA直売店 地産地消 次の戦略は 特産だけでなく少量多品種も
長井にあるJAよこすか葉山の農産物直売所「すかなごっそ」が先月22日、来店100万人を突破した。市内初の大型直売所とあって、2011年6月のオープン当初から話題の同店。現在は、月単位約3〜4万人の来店客数で推移し、観光客の立ち寄りスポットとしても人気だが、この土地ならではの課題も浮かび上がっている。現状について取材した。
リピーター生む工夫ずらり
キャベツ畑が広がる長井地区、赤い大きな屋根が見える。平日の朝9時半、開店とともに野菜などを目利きしながら買っていく人々=写真。週末になると、店舗沿いの国道134号線は三浦方面からの車の渋滞が続くことも多い。「平日は地元客が7割、休日は観光帰りの新規客が増える。特に夏場は、特産品(スイカやメロン)目当てに、年末年始はキャベツや大根などを求めて客足が伸びる傾向にある」と同店の島野店長は話す。
店舗では、出荷者の対面販売や野菜・果物の詰め放題、パンの日・卵の日・肉の日・ハムの日といったイベントを実施。近くの長井漁協と連携して海産物も取り扱うなど、飽きさせない工夫も欠かさない。横須賀土産のほか、葉山牛や惣菜のコーナーも人気だという。
生産者の意識変革も
店舗の名前は定着したが、3年目で見えてきた課題もある。現在のところ、店舗で扱う地場産物の割合は8割前後。10月・11月のいわゆる端境期は、地場産物の出品も減り、相対的に客足も伸びにくい傾向にある。さらに、果物や米など三浦半島での栽培農家が少ない品目は、県内外から調達しているが、「地場産物が多くなると客数も増えている。来店客の半数はリピーター。消費者が常に旬のもの、新しいものを求めていることを意識しなくては」と分析する。
こうした大型の直販所設置の狙いは、地場産物の販路拡大だけではない。生産者の顔が見えることでの「意識の変革」を求めている。現在、店舗に生産物を納入する「出荷者」には410人が登録。だが、実際に稼働しているのは、平日140人、土日が200人前後。「種類と品数が多ければ必ず売れる。少量でも出荷者が多ければ、消費者の選択肢は広がる」と、店舗側も出荷者に促しているという。農業指導などサポート体制もあり、品目数もオープン当初と比べると1割近く増えているが、「作ったものを並べるだけでなく、売ろうという意識をもっと上げなければ」と話す。
顔が見える「手ごたえ」
一方で、積極的に新しい品種の栽培に取り組む若い生産者も増えている。夫婦で手掛けた野菜や加工品を出荷するケースも多い。さらに、出荷者同士の横のつながりも生まれるなど、刺激にもなっているという。例えば、珍しいハーブやカラフルな人参・大根、食べやすさを考えて改良された品種など、常に目新しさを求める消費者にとって、興味は広がる。「自分の作った農産物が消費者に渡っているという手ごたえは、地場農業の底上げにつながるはず」
農産物に限らず、加工品なども市内の企業が手掛けたものを扱うなど、地場へのこだわりを見せる同店。農業を介した地域交流の拠点として、また、大量の出荷が難しい高齢農家や、市場に出回りにくい少量多品種を手掛ける農家の受け皿としても、さらに期待がかかっている。
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