スクールランチ 本格実施に疑問の声 市民団体は完全給食望む
市内の中学校で実施されているスクールランチ(注文弁当)の充実を図る横須賀市では、今年1月と6月に統一メニューの試行事業を行った。ここで出た課題を解決したうえで、来年度中の全校実施を目指すとしているが、今月行われた市議会教育福祉常任委員会では、「ニーズに応えられていない」として、実施の見直しを迫る意見が頻出している。
中学校で家庭から弁当を持参できない場合は、各校で当日、パンや弁当を注文。市ではこれを「スクールランチ」と位置付けている。近年、中学校での完全給食実施が議論される中、現状の注文弁当に対する栄養面のバランスや価格などの課題が、給食ニーズの高まりに繋がっているとして、横須賀市は「スクールランチの拡充」の方針を進め、(仮称)横須賀給食弁当実施事業を試行している。
注文率6・4%
今年1月に市内14校で行われた試行事業では、市内にある5つの弁当事業者が小学校の給食献立をアレンジした弁当(400円)を提供する方式で実施した。5日間の平均注文率は14・7%。アンケートでは「良い取り組みだと思う」と答えた保護者が約7割いたが、「事前予約など注文が面倒」「ご飯が多い・少ない・冷たい」という声も多かった。6月には5校で試行し、注文率は10日間で6・4%。メニューによっては3%台の日もあった。味については半数が「おいしかった」と回答している。
学校側の事後アンケートでは、「残菜もあり、栄養バランスを考えた弁当といっても、食べていなければ提供する意味がない」「当日の弁当注文ができず、パンの注文が増えた」と回答。予約や集金などの事務手続きの負担も大きく、現状通りで良いとの意見が多かったという。さらに弁当事業者からは「食材の原価高騰もあり、継続して実施するには注文数が増えないと厳しい」「当日注文は食材調達の面でも、作業の面でも対応が難しい」という声があった。
議会「現段階では決断できない」
今月5日に行われた市議会教育福祉常任委員会では、今後の方針に疑問を呈す声が頻出した。そのひとつが注文率の低さだ。「この方式がニーズに応えていないという表れ」「現行の弁当注文のほうが、利便性が高い」など、現段階では本実施を決断すべきではないという意見が多かった。
また、アレルギー対応に関する食材の公表に対して、市は「食材納入が当日になる事業者もあり対応が難しいうえ、表示義務がない」と回答したが、市議側からは「市の管理栄養士が作成した献立で弁当業者に依頼するのなら、使う食材が公表できないという理由がわからない。学校給食に対する危機意識が乏しい」と厳しい声が上がった。
市学校保健課では2回の試行を踏まえ、当日注文に対応できる体制など調整に取り組み、来年度中の全校での継続実施を目指すという。一方、市民団体が行ったアンケートでは、約8割が完全給食実施を求めているという結果も出ている。市内では現在、完全給食実施に関する請願の提出に向けて署名活動も行われており、中学校での給食に関する議論が活発化しそうだ。
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