横須賀製鉄所(造船所)創設150周年の「記念イヤー」となった2015年。大規模なイベントや歴史講座など「横須賀らしさ」を内外に発信する機会に恵まれた1年だった。その一方で、懸案となっているのが「人口減少」。これを打破しようと、官民で多様な取り組みが進められている。そんな1年の動きを、タウンニュースの紙面から経済・政治・教育・文化・スポーツの分野で振り返る。
経済
観艦式と連携
「横須賀は近代産業発展の地」―。市では、年間を通して周年記念事業を展開。コミュニティセンターや美術館・博物館での展示・歴史講座など=【1】、横須賀の独自性も打ち出しながら集客と郷土愛を育んだ。特に10月は、観艦式と連携したイベント―国内最大規模の「横須賀パレード」を開催。また、海上自衛隊各部隊のレシピを再現した「海自カレー」を開発=【2】。これにちなんだ「フェスタ」など、多くの人出で賑わった。
誘客促進に史跡・サブカル
市内にある史跡の活用にも動きがあった。3月には、東京湾要塞の猿島砲台跡と千代ケ崎砲台跡が国指定の史跡に登録。走水低砲台跡も含めた「観光ルート」の整備も進む。4月には観光立市推進条例が施行され、観光資源の整備や情報集約・周遊ルートなど市内外への発信力強化に努めている。
昨年末、自治体として公式に取り組みを始めたスマートフォンゲーム「イングレス」による集客促進。10月には「ミッションデイ」と題した大規模イベントが行われた。さらに、アニメ・マンガ・ゲーム・コスプレなどの”サブカル”を一堂に集めた「ヨコカル祭」の実施(10月)など、誘客の裾野が広がっている。
市の特産品を贈る「横須賀応援ふるさと納税」も6月からスタートした。納税PRだけでなく、観光誘客へつなげることも期待される。利用件数は、6月から12月16日まで1650件と、市の当初予測の年度内300件を大きく上回り、好調だという。
横横値下げ来年春
また、観光集客に欠かせないインフラの整備では来春、横浜横須賀道路が値下げとなることが明らかになった。市などが再三に渡り、国に要望していたもの。さらに、横須賀SAのスマートIC新設も決まっている。
西地区では2月、佐島の丘通り線が開通し、国道134号線も拡幅。アクセス向上で、観光面だけでなく産業振興への寄与が期待されている。
「地方創生」で商品券
消費喚起や観光振興など、国の地方創生交付金を用いた事業も相次いだ。目玉となったのは、プレミアム商品券とプリペイドカードの販売。商品券の発行総額18億円(プリペイド型は3千万円)は、これまでの最大規模。衣笠商店街では、来月末までカード利用の実証実験が行われている。
再開発のシンボル
官民連携のまちづくりが進む中で、横須賀中央地区の再開発では11月、大滝町2丁目地区に「ザ・タワー横須賀中央」が竣工。市内中心地の新たなランドマークが誕生した。同地区では現在、4つの再開発協議会が立ち上がっており、これに続く開発事業に期待がかかっている。
その中央地区では、市と商店街が連携した「ホコ天プロジェクト」が企画されていたが今月、開催見送りが決まった。そんな中で積極的な動きを見せているのは、若手商店主らの有志団体「ヨコスカダウンタウンクラブ」。ホコ天に代わるイベント「街市(まちいち)(仮称)」の計画も立ち上がっている。
また、久里浜地区では7月、久里浜港の事業用地に温浴施設と冷凍ケーキ製造会社の進出が決定。来年度中の操業を目指し、整備が進められている。
新しい働き方提案
YRP地区などICT企業を有する立地を活かした「ヨコスカバレー構想」も7月に本格始動した。「10年・100社の企業集積、雇用換算で100億円の効果」を掲げた官民連携の取り組みが進んでいる。
また、インターネットを使い、時間や場所にとらわれずに働く「テレワーク(クラウドソーシング)」の支援普及に、市と商議所の双方が乗り出した。民間IT会社との連携で、在宅での新たな働き方を提案するセミナーも開催している。
政治
市政運営に「物言い」
吉田市政2期目の折り返しとなった今年、有識者による中間検証も行われた。政策集の進捗達成率は68・8点という評価。しかし、市議会の答弁や職員の採用問題など、吉田市長の市政運営に関する「100条委員会」が立ち上がり、審査が継続している。
そして、4年に1度の統一地方選が行われたのが4月。市議会史上2人目の20代女性議員が誕生するなど注目を集めたが、市議選の投票率は補選を除く過去最低の46・59%に沈んだ。
若者の政治離れが叫ばれて久しい中、市内の学生団体「スカペンコ」主催の政策コンペから、「ネイビーパーカー」が誕生した=【3】。「ファッションツールでまちおこしを」という10代の学生による企画立案が実を結び、商品化された。
一方で、「SEALDs」に代表される、安保法制反対の運動も活発化。市内では、市民有志が「横須賀ALLs」を立ち上げ、現在も街頭活動を続けている。
米海軍基地との距離感
基地が立地する独自性を活かし、市は「英語を学べる街」というブランドイメージ形成に乗り出した。「基地内留学」として、米国州立大学での英語学習プログラムを初実施。来年度も開講が決まっている。さらに、中高生が4日間を英語だけで過ごす「イングリッシュキャンプ」も催された。
その米海軍基地に10月、原子力空母ロナルド・レーガンが配備された。同月の一般開放時には、入場待ちの観光客らの行列が2Kmにも及ぶ注目ぶりだった。
一方で、市民団体が行った原子力空母に関する1万人市民アンケートでは、安全性に不安を抱える回答が多くを占めた。11月には原子力艦災害時の避難基準を厳格化。今月9日には河野太郎防災担当大臣が同艦などを視察し、市を訪問=【4】。避難範囲の拡大など、今後の議論が注視されている。
空き家の利活用進む
市の代執行による解体など、「空き家問題」も深刻化しているが、これを有効活用しようと、関東学院大学の学生が「再生プロジェクト」を発足させた。追浜の谷戸にある空き家を改修し、シェアハウスとして学生が入居している。今月から2件目の”再生”に着手。地元イベントや町内会にも積極的に参加し、地域コミュニティの再構築に力を注いでいる。
警察署移転と跡地利用
今年7月、横須賀警察署が新港地区に移転。これをもって同地区「官公庁ゾーン」の整備が完了した。そこで浮上したのが、同署の跡地問題=【5】。近隣自治会やPTAなどが有効活用を求めたが、市は「土地を取得しない」という姿勢を示している。
また、浦賀警察署の久里浜地区(JR久里浜駅西側)への移転計画も明らかになった。今後は、国・県と地域住民との協議を行い、跡地利用についても、市は「慎重に議論を進めていく」としている。
政府の「地方創生」の具体策として、市内の政府関係機関の移転構想が浮上した。今月17日の有識者会議の結果、海洋研究開発機構と情報通信研究機構の一部が検討対象となっている。
教育
子育て支援に新制度
今年4月から子ども子育て支援制度が施行。小規模保育などニーズに応えた施策が進められている。また、公立保育園の再編実施計画も発表。民営化や統合の方針が打ち出され、公設公営の「認定こども園」が設置されることが明らかになった。
中学校給食の実施を求める声が高まる中、現状の「スクールランチ」拡充について、昨年度行った試行事業での注文率低迷などの課題を受け今夏、市は「昼食アンケート」を行った。保護者の7割近くが完全給食を望む結果となっている。
文化
新分野への挑戦
横須賀美術館では、この夏「ウルトラマン創世紀展」を開催。新たなジャンルの企画展に、幅広い世代の関心を集めた。
また、衣笠コミュニティセンターの講座から、高校生によるオリジナルミュージカルの企画が立ち上がった。来年1月の公演に向けて、練習を重ねている。
スポーツ
女子バスケ全国3位
明るい話題が続いたのはスポーツの分野。坂本中女子バスケットボール部は、8月に行われた全国大会で3位に輝いた=【6】。市の駅伝大会を新記録で制した大津中男子も、11月の県大会では2位、関東大会で8位の好記録を残した。
プロ野球シーズン最多安打記録の更新で注目されたのは、市内出身の秋山翔吾選手(埼玉西武ライオンズ)。今月21日には市のスポーツ大賞が授与された。
2020年の東京五輪・パラリンピックに向けて、これを目指すアスリートを地元企業が支援する「マッチング」も実現。市内の企業に2人が就職することになった。
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