横須賀海軍工廠で1921年(大正10年)に建造された戦艦陸奥。当時の造船技術を集めた日本海軍の象徴的な戦艦に、再び注目が集まっている。現在、東京都の「船の科学館」に展示されている同艦主砲の「里帰り」が今年の夏にも実現する。移設場所はヴェルニー公園。海上から輸送し、設置整備を行ったうえで、年内には公開される見込みだ。近代の歴史遺産を観光誘客施策に取り込む市にとって、新たなランドマークとなりそうだ。
「先人たちの技術を後世に」
横須賀で起工し、数奇な運命を辿った戦艦陸奥。太平洋戦争末期、原因不明の爆発により、乗員1121人とともに、瀬戸内海の柱島沖で沈没した。戦後の1971年に引き揚げが行われ、4番砲塔(主砲)は船の科学館、山口県周防大島の陸奥記念館には艦首・主錨・副砲などが展示されるなど、同艦の装備は現在、日本各地に点在している。
この主砲移設の話が持ち上がったのが2年前のこと。2020年東京五輪・パラリンピック開催による、船の科学館一体の再整備により、撤去が取りざたされた。これに対して「横須賀の工業技術や海洋開発発展の象徴として、主砲の移設を」と立ち上がったのが、市内の政財界人ら。元統合幕僚長の齋藤隆さんを代表に「陸奥の里帰りを支援する会(陸奥の会)」を結成。同会では、横須賀で艦体の大改修を行い、主砲を新たに搭載した1936年から80年となる2016年の移設をめざし、働きかけを行ってきた。
無償譲渡で移設
署名活動では3万筆超を集め、こうした動きに応じて14年10月に、同館(日本海事科学振興財団)からの無償譲渡が決定した。課題となったのは、輸送方法と費用。口径41cm、全長18・8m、重さ102t―。同会では、海上輸送の費用を約4千万円と見積もり、移設費用の確保に向けた募金活動を進めてきた。市役所1階市民ホールには、同艦の模型と歴史を記したパネルを展示。さらに、市内では、軍艦グルメイベントやおみやげ品の開発なども展開し、「里帰り機運」の高まりを醸成している。
また、同会では移設が実現したことを受け今秋、「よこすか軍艦検定」の実施を企画している。陸奥や三笠などの軍艦、近代史を含めた出題を考えているという。
地域遺産の活用探る
移設場所となるのは、ヴェルニー公園の記念館前。市ではすでに土質調査・基本設計を終えており、今年度の補正予算で、輸送設置費用を計上。同会の寄付金約2500万円と防衛補助金約1300万円で賄われる。8月末までに輸送を行い、設置場所には説明板や照明を設ける予定。こうした整備のうえ、年内には正式に公開となる見込みだという。
同会の齋藤代表は「地域の方々の大きな支援もあり、順調に進めることができた。移設して終わりではなく、陸奥を通して横須賀発の技術を伝え、他の歴史遺産とともに地域を活気づける仕掛けも考えていきたい」と期待を表した。
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