9月7日(水)から開幕するリオパラリンピックのウィルチェアーラグビー競技に出場する 山口 貴久さん 坂本町出身 34歳
大事故がリオへの道に
○…車いす競技の中で唯一タックルが許されているウィルチェアーラグビー。当初はひっくり返る怖さもあった。激しいぶつかり合いで壁に吹っ飛ばされた経験もある。6年の選手生活を経た現在の心境は「体が一回り違うオーストラリアの選手を止めた時に『見たか』となるんです」。自信に溢れた顔で代表戦を語るその姿からは、メダルが期待される日の丸戦士の一員としての誇りと覚悟が滲む。
○…坂本小・中と9年間はサッカー一筋、高校ではバンド活動に明け暮れた。ホテルの専門学校在学中に父親が独立。親孝行の意も込めて会社を手伝う覚悟を決めていた19歳のあの日、人生は大きく変わった。地元の友人らと真夜中のドライブ、つつじヶ丘の坂を下り始めたところで桜台中(現坂本中)の校庭に車が突っ込んだ。大量の出血。ただそれ以上に不思議なことがあった。「体が動かない、足の感覚がない」―。運び込まれた病室では悪夢にうなされ続けた。
○…医師から告げられたのは「頸髄損傷、四肢麻痺」難解な四字熟語の意味は理解したくなかった。それから1年半に及ぶ入院生活。中でも「地獄だった」のが嚥下(飲み込む)能力低下による痰のつまり。毎度毎度急に息が出来なくなる辛さは「もう一度事故に遭う方がマシ」と苦笑するほど。それでも周囲に苦しい顔は見せられなかった。事故当時運転していたのは親友のようないとこ。「俺が苦しむ姿を見るあいつの方が辛いだろうから」―。
○…退院後、知人の紹介で始めたのがウィルチェアーラグビーだった。現在は横浜のクラブに所属。前回ロンドン大会をTV観戦して刺激を受け、練習量・質とも向上させた結果、3年程前から代表に定着している。練習にはトレーナーがつき、アスリート雇用で就職した会社が支援を約束。半年前には愛する人と家族になった。「最近良いことばかり起きてる」。幸運の風をリオのコートでも吹かせる。
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